自己免疫性肝炎

Autoimmune Hepatitis

自己免疫性肝炎(Autoimmune Hepatitis)|自己免疫性肝炎(AIH)は、本来は体を守る免疫が自分の肝細胞を攻撃し、慢性的な肝臓の炎症を起こす病気です。中高年の女性に多いものの、小児や男性を含むあらゆる年代で発症します。治療せずにいると肝硬変や肝不全に進むことがあります。一方で、ステロイドを中心とする治療がよく効くことが多く、早く見つけて治療を続ければ、多くの方が通常に近い生活を送れます。

自己免疫性肝炎の要点

自己免疫性肝炎は、免疫が自分の肝細胞を攻撃して慢性的な肝臓の炎症を起こす病気で、中高年の女性に多く、国の指定難病です。無症状で健診の肝機能異常から見つかることもありますが、だるさや黄疸が出ることもあり、未治療では肝硬変に進むことがあります。

別名・略称AIH、ルポイド肝炎
分野消化器・肝胆膵疾患
遺伝形式典型的な遺伝性疾患ではない
好発年齢中高年の女性に多いが、小児や男性も含め全年齢で発症
主な症状無症状のことも多い。だるさ、食欲低下、黄疸など
主な検査自己抗体(ANA・ASMA)、血清IgG、肝生検
主な治療副腎皮質ステロイドが中心
受診する主な診療科消化器内科・肝臓内科

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自己免疫性肝炎とは

自己免疫性肝炎は、肝細胞を標的とする自己免疫反応によって起こる慢性・進行性の肝炎です。特徴は次の4点です。①抗核抗体(ANA)や抗平滑筋抗体(ASMA)などの自己抗体が陽性になる、②血清IgGが高くなる、③肝組織で門脈域の周りの肝細胞が壊れる「インターフェイス肝炎」と形質細胞の浸潤がみられる、④副腎皮質ステロイドがよく効く。肝炎ウイルス、アルコール、薬剤、代謝性疾患など、ほかに肝障害を起こす原因が見当たらないことが診断の前提となります。なお、自己免疫性肝炎は肝臓に対する自己免疫の病気です。血小板が自己抗体で壊される特発性血小板減少性紫斑病(ITP)とは別の病気なので、混同しないよう注意してください。

分類として、国際的には検出される自己抗体の種類によって病型が分けられます。1型はANAやASMAが陽性になる型で、日本の患者さんのほとんどがこの型です。2型は抗肝腎ミクロソーム1型抗体(抗LKM-1抗体)や抗肝サイトゾル1型抗体が陽性になる型で、主に小児・若年者にみられます。日本ではまれです。発症の仕方から、ゆっくり進む慢性肝炎型と、急性肝炎のように急に発症する急性発症型にも分けられます。急性発症型の中には、急性肝不全(劇症肝炎)に至る重症例があります。原発性胆汁性胆管炎(PBC)の特徴をあわせ持つPBCとのオーバーラップ症候群や、小児で胆管病変を伴う自己免疫性硬化性胆管炎も知られています。歴史的には、1950年代に若い女性の高γグロブリン血症を伴う慢性肝炎として報告され、その後「ルポイド肝炎」などと呼ばれた時期を経て、現在の疾患概念が確立されました。1990年代以降、国際自己免疫性肝炎グループ(IAIHG)が診断スコアリングを作成し、日本でも厚生労働省研究班が診断指針と診療ガイドラインを整備しています。

自己免疫性肝炎の疫学・患者数

日本では、厚生労働省研究班の全国調査で患者数が約3万人と推計された報告があり、以前の推計より増えています。これは本当に患者さんが増えていることに加え、健診での肝機能検査の普及や病気の認知度向上により、診断される人が増えた影響もあると考えられています。女性に多く、男女比はおおむね1対4以上とされます。診断時の年齢は50〜60歳代が中心で、近年は高齢での発症が増える傾向が指摘されています。小児や若年者の発症もあり、小児では2型の割合が相対的に高くなります。欧米では人口10万人あたり年間1〜2人程度の発症と報告されています。日本人の発症頻度も欧米と大きくは変わらないと考えられています。慢性甲状腺炎(橋本病)、シェーグレン症候群、関節リウマチなど、ほかの自己免疫疾患を合併する頻度が比較的高いことも特徴です。

自己免疫性肝炎の原因・病態生理

原因はまだ完全には分かっていません。遺伝的に病気になりやすい体質(疾患感受性)に環境要因が加わり、肝臓の抗原に対する免疫の「寛容」(自分を攻撃しない仕組み)が破綻することで発症すると考えられています。単一の遺伝子で決まる遺伝病ではなく、親から子へそのまま遺伝する病気ではありません。疾患感受性に最も強く関わるのは、免疫の型であるヒト白血球抗原(HLA)です。欧米の1型ではHLA-DR3やDR4が、日本人ではHLA-DR4(とくにDRB1*04:05)が関連すると報告されています。HLAの型は、病気の起こりやすさだけでなく、発症年齢や重症度とも関連する可能性が指摘されています。環境要因としては、ウイルス感染(A型・E型肝炎ウイルス、EBウイルスなど)、薬剤(ミノサイクリン、ニトロフラントインなど)、妊娠・出産に伴う免疫状態の変化などが、きっかけとなりうるものとして挙げられています。

発症の仕組みとして、次のような流れが想定されています。抗原提示細胞がHLAクラスII分子を介して肝臓の自己抗原(2型ではシトクロムP450 2D6など)をヘルパーT細胞に提示します。すると、自己反応性のCD4陽性T細胞が活性化されます。活性化したT細胞はサイトカインを放出し、CD8陽性の細胞傷害性T細胞、マクロファージ、NK細胞を動員して肝細胞を傷害します。さらにB細胞が形質細胞に分化して自己抗体やIgGを産生します。このため組織では形質細胞が目立ち、血液ではIgGが高くなります。また、免疫反応にブレーキをかける制御性T細胞の数や機能が低下していることも報告されています。これが、免疫反応が収まらずに慢性化する一因と考えられます。炎症が続くと、門脈域の周りから肝細胞の壊死が広がり(インターフェイス肝炎)、星細胞が活性化して線維化が進みます。最終的には肝硬変に至ります。なお、ANAやASMAは病気の目印(マーカー)ですが、これらの抗体そのものが肝細胞を直接壊すわけではないと考えられています。

自己免疫性肝炎の症状

  • 無症状(健診での肝機能異常): 日本では、自覚症状がないまま健康診断でAST・ALTの上昇を指摘され、見つかる例が少なくありません。症状がなくても肝臓の線維化が進んでいることがあります。
  • 全身倦怠感・易疲労感: 最も多い症状の一つです。肝臓の炎症が強い時期に目立ちますが、炎症が治まった後も続くことがあります。
  • 食欲不振・吐き気: 肝炎の活動性が高いときにみられ、体重が減ることもあります。
  • 黄疸: 皮膚や白目が黄色くなる症状です。急性発症型や病気が進んだ段階でみられ、ビリルビン値が高いほど重症である可能性を示します。
  • 褐色尿(濃い色の尿): 血液中のビリルビンが増えると、尿が紅茶やコーラのような色になります。黄疸より先に気づかれることがあります。
  • 発熱・関節痛: 微熱や関節の痛みを伴うことがあり、膠原病と間違えられる場合があります。合併する自己免疫疾患による症状のこともあります。
  • 右上腹部の不快感・肝腫大: 肝臓が腫れることで、右の肋骨の下に重苦しさや鈍い痛みを感じることがあります。
  • 皮膚のかゆみ: AIHの典型的な症状ではありません。強い場合は、胆汁うっ滞を伴うPBCとのオーバーラップを疑う手がかりになります。
  • 腹水・下肢のむくみ: 肝硬変に進んで肝臓の働き(肝予備能)が落ちると、アルブミンの低下や門脈圧の上昇によって起こります。
  • 出血しやすさ・あざ: 肝臓で作られる凝固因子が減ったり、門脈圧亢進に伴う脾臓の腫れで血小板が減ったりすることで、あざや鼻血が出やすくなります。
  • 吐血・下血: 肝硬変による食道・胃静脈瘤が破れると大量出血を起こすことがあります。緊急の治療が必要です。
  • 意識障害・羽ばたき振戦(肝性脳症): 急性肝不全や非代償性肝硬変でみられます。ぼんやりする、昼夜逆転、手のふるえなどがあれば、緊急の受診が必要です。

自己免疫性肝炎の経過と合併症

経過は人によって大きく異なります。慢性型では、自覚症状のないまま数年〜数十年かけて線維化が進みます。診断した時点で、すでに肝硬変になっている例もあります。急性発症型は急性肝炎のような強い症状で始まり、一部は急性肝不全に進みます。急性発症型ではIgGが正常であったり、自己抗体が陰性や低い値であったりすることがあり、診断が難しくなります。治療をしない場合の予後は不良とされます。かつての報告では、活動性の高い例の多くが数年のうちに肝硬変や肝不全に至ったとされています。適切な免疫抑制療法によって大半の例で寛解(AST・ALTとIgGが正常化した状態)が得られ、線維化が改善する例も報告されています。ただし、治療を減量・中止すると再燃(病気が再び悪化すること)が多いことが本症の大きな特徴です。多くの患者さんで長期の維持療法が必要になります。

合併症には、病気そのものによるものと、治療によるものがあります。病気によるものとしては、肝硬変、門脈圧亢進症(食道・胃静脈瘤、脾腫、腹水)、肝性脳症、そして肝細胞癌があります。肝細胞癌の発生率はウイルス性肝炎より低いとされますが、とくに肝硬変の方では定期的な検査が必要です。また、慢性甲状腺炎、シェーグレン症候群、関節リウマチ、全身性エリテマトーデスなどの自己免疫疾患を合併しやすく、PBCや原発性硬化性胆管炎(PSC)とのオーバーラップもみられます。治療によるものとしては、ステロイドを長く使うことによる骨粗鬆症・圧迫骨折、糖尿病、高血圧、白内障・緑内障、満月様顔貌、感染症、気分の変化があります。アザチオプリンでは骨髄抑制、膵炎、肝障害などに注意が必要です。

自己免疫性肝炎の診断・診断基準

診断の進め方は次のとおりです。まず、肝機能異常の原因として、ウイルス性肝炎、アルコール、薬剤、脂肪肝、代謝性疾患などを除外します。そのうえで、自己抗体の陽性、血清IgGの上昇、肝組織の特徴的な所見、ステロイドへの反応性を組み合わせて総合的に判断します。どれか一つの検査だけで確定できる診断マーカーはないため、可能な限り肝生検を行うことが推奨されています。日本では厚生労働省研究班の診断指針が用いられ、補助的に国際自己免疫性肝炎グループ(IAIHG)の改訂版スコアや簡易版スコアも使われます。急性発症型や非典型例では診断が遅れやすく、急性肝不全に移行する危険もあります。原因のはっきりしない急性肝炎では、早い段階で肝臓専門医に相談することが重要です。

  • 血液生化学検査: AST・ALTといった肝細胞障害を示す酵素が主に上がり、ALPやγ-GTPの上昇は比較的軽度にとどまるのが典型的です。ビリルビン、アルブミン、プロトロンビン時間、血小板数は、重症度や肝予備能の評価に用います。
  • 血清IgG・γグロブリン: 多くの例でIgGが基準値を超えて高くなり、治療に反応すると下がるため、病気の活動性を追う指標にもなります。ただし急性発症型や高齢者では正常範囲のこともあります。
  • 自己抗体検査: 1型ではANAやASMAが陽性になり、2型では抗LKM-1抗体などが陽性になります。抗体の値と重症度は必ずしも一致しません。抗体が陰性の例もあり、抗体が陽性というだけで診断はできません。
  • 除外診断のための検査: B型・C型肝炎(必要に応じてA型・E型、EBウイルスなど)の検査、抗ミトコンドリア抗体(PBCとの鑑別)、銅代謝(ウィルソン病)、鉄代謝などを調べます。あわせて、飲酒歴や服用している薬・サプリメントを詳しく確認します。
  • 肝生検(病理組織検査): 門脈域の周りの肝細胞が壊れるインターフェイス肝炎、形質細胞の浸潤、肝細胞のロゼット形成、エンペリポレーシス(肝細胞の中にリンパ球が入り込む像)が特徴です。急性発症型では、小葉中心帯の壊死が目立つことがあります。線維化の程度を評価でき、治療を中止できるかの判断にも役立ちます。
  • 厚生労働省研究班の診断指針: 他の原因による肝障害を除外したうえで、自己抗体陽性、IgG高値、特徴的な組織所見、ステロイドの著効といった項目がいくつ満たされるかによって、典型例と非典型例を判定します。指定難病の申請でも、この基準に沿った診断が求められます。
  • 国際診断スコア(改訂版・簡易版): IAIHGが作成したスコアリングシステムで、点数によって「確診」「疑診」を判定します。簡易版は日常診療で使いやすい一方、急性発症型やオーバーラップ例では判定が難しくなることがあります。
  • 画像検査・線維化評価: 腹部超音波、CT、MRIで、肝臓の形の変化、脾腫、腹水、肝腫瘍の有無、胆管の異常(PSCとの鑑別)を確認します。エラストグラフィ(肝臓の硬さの測定)や線維化マーカーは、線維化の評価や経過観察に用いられます。
  • 重症度判定: 臨床症状(肝性脳症など)、検査所見(プロトロンビン時間、ビリルビン値など)、画像所見(肝臓の萎縮など)から重症度を判定し、治療の強さや専門施設への紹介の必要性を判断します。指定難病の医療費助成の判定にも用いられます。

自己免疫性肝炎と鑑別すべき疾患

  • 薬物性肝障害: 薬剤の開始時期と肝障害の時間的関係、薬をやめた後の改善の有無で区別しますが、自己免疫性肝炎に似た薬物性肝障害もあり、慎重な経過観察が必要です。
  • ウイルス性肝炎(B型・C型・E型など): ウイルスマーカーで区別します。ステロイドを使う前にB型肝炎ウイルス感染の有無(既往感染を含む)を確認することは、HBV再活性化を防ぐうえでも必須です。
  • 原発性胆汁性胆管炎(PBC): 抗ミトコンドリア抗体陽性、ALP・γ-GTP優位の上昇、IgMの上昇が特徴で、両方の特徴を持つ場合はオーバーラップ症候群として扱われます。
  • 原発性硬化性胆管炎(PSC): MRCP(MRIによる胆管撮影)などで胆管の数珠状狭窄がみられることで区別します。小児や若年者、炎症性腸疾患を合併する例では、とくに注意が必要です。
  • ウィルソン病: 若年者の原因不明の肝障害では、血清セルロプラスミン低値、尿中銅排泄の増加、角膜輪(カイザー・フライシャー輪)の有無を確認します。
  • 代謝機能障害関連脂肪性肝疾患(MASLD/NAFLD): 脂肪肝でもANAが低い値で陽性になることがあるため、肝生検による組織像で区別することが重要です。両者が合併している場合もあります。

自己免疫性肝炎の治療

治療の目標は、AST・ALTとIgGを正常化させて生化学的寛解を得て、それを長く保つことです。これにより、肝硬変や肝不全への進行を防ぎます。中心となるのは副腎皮質ステロイド(プレドニゾロン)です。十分な量で治療を始め、検査値の改善を確認しながら少しずつ減らし、再燃しない最小量で維持します。日本のガイドラインでは、ごく軽症で線維化の乏しい例などに限って、ウルソデオキシコール酸(UDCA)で治療を始める選択肢も記載されています。ステロイドの効果が不十分な例、副作用で減量が必要な例、再燃を繰り返す例ではアザチオプリンを併用します。急性肝不全や重症例では、肝移植が可能な専門施設との連携が欠かせません。高齢者、骨粗鬆症や糖尿病のある方、妊娠を希望する方などでは、薬の選び方や量の調整が必要です。具体的な治療方針は必ず主治医・肝臓専門医と相談して決めてください。

  • プレドニゾロン(副腎皮質ステロイド): 第一選択の治療です。体重あたり一定量(日本のガイドラインではおおむね0.6mg/kg/日以上)で開始し、数週間ごとに減量して、少量で維持します。多くの例で数週間以内に肝機能の改善がみられますが、自己判断で中止すると再燃の危険があります。
  • ステロイドパルス療法: 急性発症型の重症例などでは、大量のステロイドを短期間点滴する治療が行われることがあります。効果が乏しい場合は、早い段階で肝移植を検討することが重要です。
  • アザチオプリン: ステロイドの量を減らしたり再燃を防いだりする目的で併用される免疫抑制薬で、日本でも自己免疫性肝炎に使える薬となっています。日本人では重い骨髄抑制や脱毛の起こりやすさに関係するNUDT15遺伝子多型の検査を使用前に行うことが推奨され、使用中は定期的に血液検査を行います。
  • ウルソデオキシコール酸(UDCA): 軽症例での単独使用や、ステロイド減量時の併用として、日本では比較的広く用いられています。PBCとのオーバーラップ例でも使われます。
  • 二次治療(標準治療が効かない・使えない場合): ミコフェノール酸モフェチルやカルシニューリン阻害薬(タクロリムスなど)が使われた報告がありますが、国内では適応外使用となる薬もあります。専門施設で慎重に検討されます。
  • 肝移植: 急性肝不全や、内科治療で改善しない非代償性肝硬変・肝細胞癌の方が対象となります。移植後の成績は比較的良好とされますが、移植した肝臓で再発する例も報告されています。
  • ステロイドの副作用対策: 骨粗鬆症の予防(ビスホスホネート製剤、カルシウム・ビタミンDなど)、血糖・血圧の管理、眼科検診を行います。必要に応じて胃粘膜を守る薬や感染症対策も行います。B型肝炎ウイルスの既往感染がある方では、HBV-DNAのモニタリングを行います。
  • 肝硬変・門脈圧亢進症の管理: 静脈瘤に対する内視鏡治療、腹水に対する利尿薬、肝性脳症の治療と予防、栄養療法などを、病状に合わせて行います。
  • 治療中止の検討: 長期間にわたって寛解が続いた例では、肝生検などで炎症が治まっていることを確認したうえで減量・中止を試みることがあります。ただし、中止後に再燃する例は多く、中止後も厳重な経過観察が必要です。

自己免疫性肝炎の予後・長期フォロー

治療によく反応して寛解が保たれれば、長期の生命予後は一般の人に近いと報告されています。日本の患者さんはステロイドへの反応が良好な例が多いとされます。一方、予後が悪くなる要因としては、診断時にすでに肝硬変であること、急性肝不全で発症すること、治療への反応が不十分であること、再燃を繰り返すことが挙げられます。高齢で発症した方でも治療効果は期待できますが、ステロイドの副作用が問題になりやすく、骨折や感染症が生活の質(QOL)を下げる要因になります。倦怠感が長く続いたり、病気や薬に関連して気分が落ち込んだりすることも、QOLに影響します。

長期のフォローアップでは、病状が安定していても、通常は1〜3か月ごとに肝機能とIgGを測定して再燃がないか確認します。あわせて、薬の副作用(血球数、血糖、骨密度、眼の検査)も定期的に評価します。肝硬変のある方や線維化が進んでいる方では、腹部超音波などによる肝細胞癌のスクリーニングを定期的に行うことが推奨されます。内視鏡による静脈瘤の評価も必要です。甲状腺の病気などの自己免疫疾患の合併がないかにも注意します。妊娠中や出産後、薬を減量・中止した後は再燃しやすい時期なので、とくに注意深く経過をみます。

自己免疫性肝炎の日常生活の注意点と公的支援(医療費助成)

日常生活で大切なのは、処方どおりに薬を飲み続け、自己判断で減らしたりやめたりしないことです。ステロイドを急にやめると、肝炎の再燃に加えて、副腎不全を起こす危険があります。飲酒は肝臓の負担になるため、控えるか主治医と相談してください。市販薬、漢方薬、健康食品やサプリメントは薬物性肝障害の原因になったり、病気の評価を難しくしたりすることがあります。使う前に主治医に相談しましょう。ステロイドや免疫抑制薬を使っている間は感染症にかかりやすくなります。手洗いを心がけ、インフルエンザや肺炎球菌などの不活化ワクチンの接種を検討してください。生ワクチンは原則として避けるため、事前に主治医に確認が必要です。骨粗鬆症の予防として、適度な運動、カルシウムやビタミンDを意識した食事、禁煙も大切です。肝硬変でなければ、特別な食事制限は基本的に不要です。肥満や糖尿病はステロイドの影響で悪化しやすいため、バランスのよい食事を心がけましょう。妊娠・出産は可能な場合が多いものの、病状が安定してから計画することが望ましいとされます。妊娠中や産後は再燃しやすく、使用する薬の調整も必要になるため、事前に主治医とよく相談してください。この病気は単一遺伝子による遺伝病ではなく、家族が同じ病気になる危険性はわずかです。家族全員が検査を受ける必要は通常ありませんが、心配な場合は主治医に相談しましょう。

利用できる制度・相談窓口

自己免疫性肝炎は指定難病(告示番号95)です。診断基準を満たし、重症度分類で一定以上に該当する場合、または軽症でも医療費が一定額を超える月が続く場合(軽症高額該当)には、医療費助成を受けられます。申請には、難病指定医が作成した臨床調査個人票が必要です。窓口は、お住まいの都道府県・指定都市の保健所などです。18歳未満(条件により20歳未満まで延長)の方は、小児慢性特定疾病の医療費助成の対象となる場合があります。肝硬変などで日常生活に大きな支障がある場合は、障害年金の対象になることがあります。また、一定の重い肝機能障害では、身体障害者手帳(肝臓機能障害)の対象になることがあります。そのほか、高額療養費制度の利用もご検討ください。相談窓口としては、各都道府県の難病相談支援センター、病院の医療ソーシャルワーカー・患者相談窓口、肝疾患診療連携拠点病院の肝疾患相談支援センターなどがあり、制度の利用や仕事との両立について相談できます。

自己免疫性肝炎に伴う心のケア・心理社会的支援

自己免疫性肝炎は、長く付き合う必要がある病気です。そのため、「いつ再燃するかわからない」という不安、薬を一生続けるかもしれないことへの戸惑い、検査結果に一喜一憂する疲れなどが、心理的な負担になりがちです。この病気に特有の問題として、ステロイドによる外見の変化(満月様顔貌、体重増加、にきび)が自信を失わせたり人と会うのを避けたりする原因になることがあります。また、ステロイドそのものが不眠、気分の高揚、抑うつ、いらいらを引き起こすこともあります。「肝炎」という名前から感染症やお酒が原因と誤解され、職場や周囲の偏見に悩む方もいます。女性に多い病気のため、妊娠・出産や育児、更年期と治療の時期が重なることも少なくありません。気分の落ち込みが2週間以上続く、眠れない、仕事や家事に手がつかないといった状態があれば、薬の影響の可能性も含めて主治医に伝えてください。必要に応じて、心療内科・精神科、公認心理師、医療ソーシャルワーカーの支援を受けることが大切です。患者会や同じ病気の方との交流が支えになることもあります。

Medi Faceでは、慢性疾患に伴うこころの不調についてのオンライン相談も行っています。お問い合わせはこちら。

自己免疫性肝炎の受診の目安

  • 健診などでAST・ALTの異常を指摘されたら、症状がなくても早めに内科(できれば消化器・肝臓内科)を受診してください。
  • 皮膚や白目が黄色い、尿が濃い褐色になった、強いだるさや食欲不振が続くときは、早めに受診してください。
  • 治療中に肝機能の再悪化を思わせる症状が出たり、自己判断で薬をやめてしまったりした場合は、すぐに主治医に連絡してください。
  • 吐血、黒いタール状の便、急にお腹が張る、ぼんやりする・言動がおかしいといった症状は、救急受診が必要です。
  • ステロイドや免疫抑制薬の使用中に高熱、咳、息苦しさなど感染症を疑う症状が出たら、早めに医療機関を受診してください。

自己免疫性肝炎についてのよくある質問

Q. 自己免疫性肝炎はうつりますか?お酒が原因ですか?

A. いいえ。自分の免疫が肝臓を攻撃して起こる病気で、人にうつることはありません。飲酒が原因の病気でもありません。ただし、肝臓を守るために飲酒は控えることが勧められます。

Q. ステロイドはずっと飲み続ける必要がありますか?

A. 多くの方は少量のステロイドを長く続けることになります。長期間の寛解が保たれた場合は、慎重に減量・中止を試みることもあります。中止後に再燃する例が少なくないため、減量や中止は必ず主治医の判断のもとで行ってください。

Q. 妊娠・出産はできますか?

A. 病状が安定していれば、妊娠・出産できる方が多いとされています。ただし妊娠中や産後は再燃しやすく、使う薬の調整も必要です。計画の段階から主治医や産科医と相談しましょう。

Q. 子どもに遺伝しますか?

A. HLAなど病気になりやすい体質は関わりますが、親から子へそのまま受け継がれる遺伝病ではありません。家族が発症する危険性は低いと考えられています。気になる症状があるときに検査を受ければ十分です。

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最終更新: 2026-10-18。発行: 株式会社Medi Face。本ページは、MSDマニュアル プロフェッショナル版、難病情報センター、各学会の診断基準・診療ガイドラインなどの公的・専門的情報を参照して作成した一般的な医学情報であり、診断・治療の代替ではありません。個別の診療は主治医・専門医にご相談ください。参考: MSDマニュアル プロフェッショナル版、難病情報センター。記載内容に誤りや古い情報を見つけた場合はお問い合わせからお知らせください。