クローン病

Crohn's Disease

クローン病(Crohn's Disease)|クローン病は、口から肛門までの消化管のどこにでも、慢性の炎症と潰瘍が飛び飛びに生じる原因不明の炎症性腸疾患(IBD)です。主に10〜20代の若い世代に発症します。腹痛・下痢・体重減少・痔瘻などをくり返し、狭窄や瘻孔のために手術が必要になることもあります。長期にわたり学業・就労・妊娠出産などの生活全般に影響するため、適切な治療の継続と生活面の支援が重要です。

クローン病の要点

クローン病は、口から肛門までの消化管のどこにでも慢性の炎症と潰瘍が飛び飛びに生じる、原因不明の炎症性腸疾患です。10〜20代に多く、腹痛・下痢・体重減少・痔瘻などをくり返し、狭窄や瘻孔で手術が必要になることもあり、厚生労働省の指定難病に指定されています。

別名・略称Crohn病、限局性回腸炎、局所性腸炎、CD、regional enteritis、regional ileitis
分野消化器・肝胆膵疾患
好発年齢主に10〜20代
主な症状腹痛・下痢・体重減少・痔瘻など
病変の特徴非連続性(スキップ病変)、腸管壁の全層性炎症
主な検査内視鏡(縦走潰瘍・敷石像)、生検(非乾酪性肉芽腫)
指定難病告示番号96
受診する主な診療科消化器内科

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クローン病とは

クローン病は、潰瘍性大腸炎と並ぶ代表的な炎症性腸疾患です。厚生労働省の指定難病(告示番号96)に指定されています。病変が非連続性(スキップ病変)に分布することと、炎症が腸管壁の全層に及ぶことが特徴で、大腸の粘膜に連続した炎症が起こる潰瘍性大腸炎とは区別されます。好発部位は回腸末端から盲腸にかけての回盲部です。内視鏡では、腸の長軸方向に伸びる縦走潰瘍や、粘膜が石畳状に盛り上がる敷石像がみられます。組織学的には、結核のような乾酪壊死を伴わない類上皮細胞肉芽腫(非乾酪性肉芽腫)を認めることがあります。全層性の炎症のため、腸管の狭窄、他臓器や皮膚と通じる瘻孔、膿瘍を起こしやすい点も重要です。痔瘻・肛門周囲膿瘍などの肛門病変を高い頻度で伴います。

1932年に米国のBurrill B. Crohnらが「限局性回腸炎」として報告したことが病名の由来です。病変部位により小腸型・小腸大腸型・大腸型に分類されます(日本の分類。国際的にはモントリオール分類のL1〜L3と上部消化管病変L4)。小腸大腸型が最も多いとされます。病気の振る舞い(疾患挙動)からは、炎症型・狭窄型・瘻孔(穿通)型に分けられ、肛門病変の有無も付記されます。診断時は炎症型が多くても、経過とともに狭窄型・瘻孔型へ移行しやすいことが知られています。この進行を抑えることが現代の治療目標の一つです。クローン病は消化管を中心とする病気で、病変の分布や炎症の深さ、合併症の現れ方は人によって大きく異なるため、一人ひとりの病型に応じた評価と治療が行われます。

クローン病の疫学・患者数

日本のクローン病患者は1970年代以降一貫して増加してきました。指定難病の医療受給者証の交付件数は数万人規模(近年は約5万人前後)で推移しています。受給者証を持たない軽症例を含めた全国の推計患者数は約7万人とする疫学調査の報告もあります。欧米に比べると有病率はなお低いものの、食生活の欧米化などとの関連が指摘され、アジア諸国でも増加傾向にあります。発症年齢のピークは10代後半〜20代で、男性ではやや若い傾向があります。小児期や中高年での発症もみられます。日本では男女比がおよそ2:1と男性に多いとされ、性差がほとんどない欧米とは異なります。家族内発症もみられますが、単一遺伝子で遺伝する病気ではありません。

クローン病の原因・病態生理

原因はいまだ解明されていません。現在は、遺伝的素因をもつ人に環境因子(食事、喫煙、腸内細菌叢の変化など)が加わり、腸管の免疫応答が過剰かつ持続的に活性化されて発症すると考えられています。ゲノムワイド関連解析では、多数の疾患感受性遺伝子領域が同定されています。欧米では細菌成分を認識する自然免疫受容体NOD2や、オートファジー関連のATG16L1・IRGM、IL-23受容体(IL23R)などの関与が知られます。一方、日本人ではNOD2変異はほとんどみられず、TNFSF15などの関与が報告されており、人種による遺伝背景の違いがあります。環境因子では喫煙が発症と再燃の明確な危険因子とされます。動物性脂肪の多い食事、抗菌薬への曝露、腸内細菌叢の多様性低下(ディスバイオーシス)なども関連が示唆されています。

腸の粘膜は本来、上皮のバリアと免疫の寛容によって、腸内細菌や食物抗原への過剰反応を抑えています。クローン病では、粘液層や上皮のバリア機能の低下、パネート細胞の抗菌ペプチド産生の異常、オートファジーによる細菌処理の障害などが起こります。その結果、細菌成分が粘膜固有層へ入り込み、樹状細胞やマクロファージがIL-12・IL-23・TNF-αなどを過剰に産生します。これによりTh1細胞・Th17細胞が優位な免疫応答が誘導され、IFN-γやIL-17などのサイトカインが炎症を増幅します。調節性T細胞による抑制が十分に働かないため、炎症は慢性化します。炎症が腸管壁の全層に及ぶと、深い潰瘍、肉芽腫形成、線維化による狭窄、潰瘍が壁を貫いて生じる瘻孔・膿瘍へと進展します。抗TNF-α抗体や抗IL-12/23抗体などの生物学的製剤は、こうした病態の鍵となるサイトカイン経路を標的として開発されたものです。

クローン病の症状

  • 腹痛: 最も多い症状の一つで、回盲部病変では右下腹部痛が典型的です。食後に増強する痛みや、腹部膨満・嘔吐を伴う場合は狭窄を疑います。
  • 慢性の下痢: 数週間以上続く下痢が多く、大腸病変があると血便や粘血便を伴うこともあります。回腸切除後には胆汁酸の吸収障害による下痢も加わります。
  • 体重減少・低栄養: 食事摂取量の低下、吸収障害、炎症による消耗が重なって起こります。低アルブミン血症や浮腫を伴うことがあります。
  • 発熱: 炎症の活動性を反映して微熱〜高熱が続くことがあります。悪寒を伴う高熱では腹腔内膿瘍の合併に注意が必要です。
  • 全身倦怠感: 炎症性サイトカイン、貧血、栄養障害などにより強い疲労感が生じます。寛解期にも残存しQOLを損なうことがあります。
  • 肛門病変(痔瘻・肛門周囲膿瘍・裂肛): 多発性・複雑な痔瘻や浮腫状の皮垂(スキンタグ)が特徴的で、腸の症状に先行して見つかることもあります。若年者の難治性痔瘻はクローン病を疑うきっかけになります。
  • 貧血: 腸管からの出血による鉄欠乏性貧血のほか、炎症に伴う貧血がみられます。回腸病変・回腸切除ではビタミンB12欠乏による貧血も起こります。
  • 成長障害・思春期遅発(小児): 小児では身長の伸びの鈍化や二次性徴の遅れが初発症状となることがあります。栄養障害と慢性炎症が関与します。
  • 口腔内アフタ: 口内炎がくり返しできることがあります。上部消化管病変の一部として、胃・十二指腸の病変を伴うこともあります。
  • 関節痛・関節炎: 最も多い腸管外合併症で、膝・足首などの末梢関節炎や、仙腸関節炎・強直性脊椎炎による腰背部痛がみられます。
  • 皮膚症状: すねなどに痛みを伴う赤い硬結が生じる結節性紅斑や、急速に進む潰瘍を伴う壊疽性膿皮症がみられることがあります。
  • 眼症状: ぶどう膜炎や上強膜炎により、目の充血・痛み・まぶしさ・視力低下が生じることがあります。早めの眼科受診が必要です。

クローン病の経過と合併症

クローン病は、症状が落ち着く寛解期と悪化する再燃期を慢性的にくり返します。自然に治癒することはまれで、生涯にわたる管理が必要です。重要なのは、症状がなくても腸管の炎症が持続していると、腸管障害が進行しうる点です。このため、自覚症状だけでなく、血液検査や便検査、内視鏡・画像検査で炎症を客観的に評価します。腸管の損傷の蓄積は、レムザン指数(Lémann index)などの概念で評価されることがあります。若年発症、肛門病変の合併、広範な小腸病変、上部消化管病変、診断時にステロイドを必要とする重い活動性、喫煙などは、予後不良(手術や合併症に至りやすい)の因子とされています。かつては診断後10年で約半数前後が腸管手術を要したとの報告がありました。生物学的製剤の普及と早期からの積極的治療により、手術率は低下傾向にあるとされます。

腸管合併症には、狭窄による腸閉塞、腸管同士・膀胱・膣・皮膚と交通する瘻孔(内瘻・外瘻)、腹腔内膿瘍、穿孔、大量出血があります。腸管切除をくり返すと短腸症候群・腸管不全となり、在宅中心静脈栄養が必要になることもあります。長期経過例では小腸癌・大腸癌のリスクが高まります。日本では特に痔瘻・直腸肛門部の癌の発生が注意すべき合併症として知られています。腸管外合併症としては、関節炎・強直性脊椎炎、結節性紅斑・壊疽性膿皮症、ぶどう膜炎、原発性硬化性胆管炎、胆石(回腸での胆汁酸吸収障害による)、尿路結石(シュウ酸の吸収亢進による)があります。さらに、骨粗鬆症、静脈血栓塞栓症、続発性(AA)アミロイドーシス、亜鉛・鉄・ビタミンB12・ビタミンDなどの欠乏、小児の成長障害もみられます。治療に伴う合併症として、免疫抑制による感染症(結核・B型肝炎の再活性化を含む)にも注意が必要です。

クローン病の診断・診断基準

診断は、慢性の腹痛・下痢・体重減少・発熱・肛門病変などの臨床症状から本症を疑うところから始まります。まず、感染性腸炎・腸結核・腸管ベーチェット病・薬剤性腸炎などの除外を進めます。そのうえで、内視鏡検査・画像検査・病理組織検査を組み合わせて総合的に判断します。日本では厚生労働省研究班(難治性炎症性腸管障害に関する調査研究)の診断基準が用いられます。主要所見は「縦走潰瘍」「敷石像」「非乾酪性類上皮細胞肉芽腫」、副所見は「消化管の広範囲にみられる不整形〜類円形潰瘍またはアフタ」「特徴的な肛門病変」「特徴的な胃・十二指腸病変」です。これらの組み合わせで確診・疑診を判定します。診断後は病変範囲(小腸型・小腸大腸型・大腸型)と疾患挙動(炎症・狭窄・瘻孔)を評価します。活動性はCDAI(Crohn's Disease Activity Index)やIOIBDスコアなどで評価し、治療方針の決定や医療費助成の申請に用います。小腸病変の評価が不十分だと過小評価につながるため、全消化管の検索が推奨されます。

  • 血液検査: CRP・赤沈の上昇、白血球・血小板の増加、貧血、低アルブミン血症、低コレステロール血症などで炎症と栄養状態を評価します。LRG(ロイシンリッチα2グリコプロテイン)など新しい炎症マーカーも活動性評価に用いられます。
  • 便検査(便培養・便中カルプロテクチン): 便培養などで感染性腸炎を除外します。便中カルプロテクチンは腸管炎症の程度を反映し、内視鏡を補う非侵襲的な経過観察に用いられます。
  • 大腸内視鏡検査(回腸末端観察を含む): 縦走潰瘍・敷石像・アフタ・不整形潰瘍の分布を観察し、生検を行います。回腸末端まで挿入して観察することが重要で、SES-CDなどの内視鏡スコアで活動性を評価します。
  • 上部消化管内視鏡検査: 胃の体部〜噴門部にみられる竹の節状外観や、十二指腸のアフタ・潰瘍は本症に特徴的な副所見で、診断の補助になります。
  • 小腸の評価(カプセル内視鏡・バルーン内視鏡・小腸造影): 小腸病変の広がりや狭窄を評価します。カプセル内視鏡は滞留の危険があるため、事前にパテンシーカプセルで消化管の開通性を確認します。バルーン内視鏡では生検や狭窄部の拡張術も可能です。
  • CT/MRエンテログラフィー・腹部超音波: 腸管壁の肥厚、狭窄、瘻孔、膿瘍、腸管外の病変を評価します。MRIと超音波は放射線被曝がなく、若年患者の繰り返す評価に適しています。
  • 骨盤MRI・肛門部診察: 複雑痔瘻の瘻管の走行や膿瘍の評価に有用です。肛門病変は外科・肛門科と連携して評価します。
  • 病理組織検査(生検): 非乾酪性類上皮細胞肉芽腫の検出は診断上重要です。ただし検出率は高くないため、陰性でも本症は否定できません。
  • 治療前スクリーニング(結核・B型肝炎・NUDT15遺伝子検査など): 生物学的製剤や免疫調節薬の開始前に、IGRA・胸部画像で結核感染を、HBs抗原・HBc抗体などでB型肝炎ウイルスをスクリーニングします。チオプリン製剤の開始前には、重篤な副作用を予測するNUDT15遺伝子多型検査が行われます。

クローン病と鑑別すべき疾患

  • 腸結核: 輪状潰瘍、萎縮瘢痕帯、回盲弁の開大、乾酪性肉芽腫、IGRA陽性などが鑑別点です。誤ってステロイドなどの免疫抑制治療を行うと重篤化するため、特に慎重な除外が必要です。
  • 潰瘍性大腸炎: 直腸から連続するびまん性の粘膜炎症で、小腸病変・全層性炎症・肉芽腫・複雑痔瘻を通常伴わない点で区別しますが、区別困難な例(分類不能腸炎)もあります。
  • 腸管ベーチェット病・単純性潰瘍: 回盲部の円形〜類円形で深い打ち抜き様潰瘍が特徴で、口腔内アフタ・外陰部潰瘍・眼症状・皮膚症状などの全身所見を参考にします。
  • 非特異性多発性小腸潰瘍症(CEAS): SLCO2A1遺伝子変異による疾患で、回腸に浅い輪走〜斜走する潰瘍が多発し、慢性の鉄欠乏性貧血と低蛋白血症が主体です。炎症反応が乏しい点も鑑別に役立ちます。
  • NSAIDs起因性腸症・感染性腸炎(エルシニア、カンピロバクター、アメーバ等): 服薬歴の確認、便培養・血清学的検査、薬剤中止後の経過で鑑別します。
  • 腸管悪性リンパ腫・単一遺伝子異常による超早期発症型IBD: リンパ腫は生検の免疫組織化学で鑑別します。乳幼児期発症の重症例では、IL-10受容体異常など原発性免疫不全症に伴う腸炎を考慮し、専門施設での遺伝学的評価を検討します。

クローン病の治療

現時点で根治療法はありません。治療の目標は、症状の改善(臨床的寛解)にとどまらず、内視鏡的な粘膜治癒など客観的な炎症の消失を目指し、狭窄・瘻孔・手術などの腸管障害の進行を防いで、長期的に良好なQOLを保つことです。目標を定めて定期的に評価し治療を調整する考え方は「Treat to Target」と呼ばれます。治療は寛解導入療法と寛解維持療法に分けて考えます。病変部位、重症度、疾患挙動、肛門病変の有無、予後不良因子、年齢、妊娠の希望などを踏まえ、日本消化器病学会のガイドラインや厚生労働省研究班の治療指針を参照して選択します。軽症から段階的に強める「ステップアップ」と、予後不良因子をもつ例に早期から生物学的製剤などを用いる「早期積極的治療」があり、個々の状況に応じて検討されます。狭窄・瘻孔・膿瘍・穿孔などには内視鏡治療や外科治療が必要となり、内科・外科・肛門科・栄養士などの多職種連携が重要です。具体的な治療選択は、必ず主治医・IBD専門医と相談してください。

  • 栄養療法(経腸栄養・中心静脈栄養): 成分栄養剤や消化態栄養剤による経腸栄養は、腸管の安静と栄養改善を通じて寛解導入・維持に役立ちます。副作用が少なく、日本では小児を中心に重視されています。高度狭窄や重症例、腸管不全では中心静脈栄養が用いられます。
  • 5-アミノサリチル酸(5-ASA)製剤: メサラジンなどが軽症例に用いられることがあります。ただし、クローン病での効果は潰瘍性大腸炎ほど確立していないとされます。
  • 副腎皮質ステロイド: 中等症〜重症の寛解導入に、プレドニゾロンなどの全身投与が有効です。回盲部の軽症〜中等症では、全身性の副作用が比較的少ないブデソニドが選択肢となります。寛解維持効果はなく、長期使用は骨粗鬆症・感染症などの副作用のため避けます。
  • 免疫調節薬(チオプリン製剤): アザチオプリンや6-メルカプトプリンは、ステロイドからの離脱や寛解維持に用いられます。生物学的製剤との併用で抗薬物抗体の産生を抑える目的でも使われます。NUDT15遺伝子検査を参考に用量を調整し、骨髄抑制・膵炎・肝障害などを定期的に確認します。
  • 生物学的製剤(抗TNF-α抗体): インフリキシマブ・アダリムマブは中等症〜重症例や瘻孔例の寛解導入・維持の中心的薬剤です。効果減弱時には、血中濃度や抗薬物抗体を考慮した増量・間隔短縮、他剤への変更が検討されます。
  • その他の生物学的製剤・分子標的薬: 抗IL-12/23抗体(ウステキヌマブ)、抗IL-23p19抗体、抗α4β7インテグリン抗体(ベドリズマブ)、JAK阻害薬(ウパダシチニブ)など、作用機序の異なる薬剤が使えるようになっています。効果・安全性・投与経路・既治療歴を踏まえて選択されます。承認状況や適応は更新されるため、最新情報を主治医に確認してください。
  • 肛門病変の治療: 肛門周囲膿瘍には切開排膿を行い、複雑痔瘻にはシートン法(ゴムなどを瘻管に通して排膿を保つ)による排膿を行い、抗TNF-α抗体などの内科治療と組み合わせます。抗菌薬(メトロニダゾール、シプロフロキサシン等)が補助的に用いられることもあります。
  • 内視鏡的バルーン拡張術: 線維性の短い狭窄に対し、内視鏡でバルーンを用いて拡張します。手術を回避または延期できる場合があります。
  • 外科治療: 内科治療に抵抗する狭窄・瘻孔・膿瘍、穿孔、大量出血、癌の合併などで行います。腸管をできるだけ温存するため、小範囲切除や狭窄形成術が基本です。術後は再発率が高いため、術後早期の内視鏡評価と再発予防治療が重要です。

クローン病の予後・長期フォロー

生命予後は一般人口と比べて大きく劣るものではないとされます。一方で、重症例や消化管癌の合併、敗血症などの重篤な合併症がある場合には予後に影響しえます。多くの患者は再燃と寛解をくり返し、生涯で一度以上の腸管手術を受ける人も少なくありません。それでも近年は、生物学的製剤などの治療選択肢の増加、早期診断、粘膜治癒を目指した治療戦略により、長期の寛解を保ちながら就学・就労・結婚・出産など通常に近い社会生活を送る人が増えています。QOLを下げる要因としては、頻回の便意、腹痛、倦怠感、肛門病変、食事制限、通院・治療の負担、人工肛門(ストーマ)の造設などがあり、身体面と心理社会面の両方への配慮が必要です。

寛解期であっても、定期的な通院で血液検査・便中マーカー・内視鏡・画像検査を行い、炎症の再燃や狭窄・瘻孔の出現を早期に把握します。長期経過例、特に大腸病変や肛門病変が長く続く例では、大腸癌や痔瘻癌の早期発見のためのサーベイランスが重要です。痔瘻の性状の変化(痛みの増強、分泌物の変化、硬結)にも注意が必要です。免疫抑制治療中は、感染症、肝機能・腎機能・血球数、皮膚癌・リンパ腫など薬剤ごとの長期リスクを確認します。ステロイド使用歴のある人や栄養障害のある人では骨密度の評価が勧められます。ビタミンB12・鉄・亜鉛・ビタミンDなどの欠乏の定期的なチェックも大切です。小児では成長曲線と思春期の発達を追い、成人診療科へのスムーズな移行(トランジション)を計画的に進めます。

クローン病の日常生活の注意点と公的支援(医療費助成)

禁煙は最も重要なセルフケアの一つです。喫煙は再燃・手術・術後再発のリスクを高めるため、受動喫煙も含めて避けることが勧められます。食事は病状によって最適な内容が異なります。活動期や狭窄がある場合は、低脂肪・低残渣(食物繊維の少ない)食や栄養剤の併用が基本です。寛解期は過度な制限による栄養不足を避け、主治医や管理栄養士と相談しながら個別に調整します。食事日記をつけて症状が出やすい食品を把握するのも有用です。解熱鎮痛薬のNSAIDsは再燃のきっかけになることがあるため、服用前に相談してください。免疫抑制治療中は感染予防(手洗い、不活化ワクチンの接種など)が大切です。生ワクチンは原則として接種できない場合があるため、治療開始前に接種歴を確認しておきます。妊娠・出産は寛解期に計画することが望ましく、多くの治療薬は妊娠中も継続が検討されます。自己判断で中止せず、早めに主治医に相談してください。家族内発症はやや多いものの、単一遺伝子による遺伝病ではなく、子どもに必ず遺伝するわけではありません。不安が強い場合は遺伝カウンセリングを利用できます。学校や職場には必要に応じて病状を伝え、トイレへのアクセスや通院への配慮を得られるよう調整しておくと安心です。

利用できる制度・相談窓口

クローン病は指定難病であり、診断基準を満たし、重症度分類で一定以上の場合、または軽症でも医療費が高額となる場合(軽症高額該当)は、難病医療費助成制度により医療費の自己負担が軽減されます(所得に応じた月額上限あり)。申請は指定医が作成した臨床調査個人票を添えて、お住まいの都道府県・指定都市の窓口(保健所等)に行います。18歳未満(継続の場合は20歳未満)では小児慢性特定疾病医療費助成の対象となります。あわせて健康保険の高額療養費制度も利用できます。病状により日常生活や就労に著しい制限がある場合は障害年金の対象となりえます。人工肛門(ストーマ)を造設した場合や中心静脈栄養が必要な小腸機能障害がある場合は、身体障害者手帳の対象となることがあります。難病患者は障害者総合支援法の障害福祉サービスの対象にも含まれます。相談窓口として、各都道府県の難病相談支援センター、保健所、医療機関の医療ソーシャルワーカー、ハローワークの難病患者就職サポーター、IBDの患者会などがあり、制度の利用や就学・就労の相談ができます。

クローン病に伴う心のケア・心理社会的支援

クローン病は若い時期に発症し、再燃の予測が難しい慢性疾患です。そのため、抑うつや不安、適応障害を合併しやすいことが知られています。この病気に特有の課題として、「外出先でトイレに間に合わないのではないか」という予期不安、食事制限による会食や交友の機会の減少、痔瘻や人工肛門に伴うボディイメージの変化や羞恥心があります。さらに、進学・就職・恋愛・結婚・妊娠への不安、周囲に病気が理解されにくいことによる孤立感、長期の通院や自己注射の負担なども加わります。心理的ストレスは腹部症状の感じ方を強め、過敏性腸症候群に似た症状が重なることもあります。気持ちの落ち込みや不眠、意欲低下が続くときは我慢せずに主治医に伝えてください。必要に応じて心療内科・精神科、公認心理師、医療ソーシャルワーカーにつなげてもらうことが大切です。患者会やピアサポートで同じ病気の人と経験を共有することも、孤立感の軽減に役立ちます。小児・思春期では、本人だけでなく家族やきょうだいへの支援、学校との連携も重要です。

Medi Faceでは、慢性疾患に伴うこころの不調についてのオンライン相談も行っています。お問い合わせはこちら。

クローン病の受診の目安

  • 強い腹痛とともに嘔吐や腹部膨満があり、排便・排ガスが止まった場合は、腸閉塞の可能性があるため救急受診してください。
  • 突然の激しい腹痛や、お腹全体が板のように硬くなった場合は、穿孔の可能性があり緊急の対応が必要です。
  • 大量の下血、ふらつき、意識が遠のく感じがある場合は、すぐに救急受診してください。
  • 38℃以上の発熱や悪寒が続く、肛門周囲の強い痛みや腫れがある場合は、膿瘍や重い感染症の可能性があるため早めに受診してください(免疫抑制治療中は特に注意が必要です)。
  • 下痢の回数や腹痛が増える、体重が減る、血便が出るなど再燃が疑われる場合は、次の予約を待たずに主治医に相談してください。
  • 目の充血や痛み・視力低下、関節の腫れ、皮膚の痛みを伴うしこりなど腸以外の症状が出た場合も、早めに受診してください。

クローン病についてのよくある質問

Q. クローン病は治る病気ですか?

A. 現時点では根治療法はなく、長く付き合っていく病気です。ただし治療は大きく進歩しており、適切な治療を続けることで長期の寛解を保ち、通常に近い生活を送っている方が多くいます。症状がなくても治療と定期検査を続けることが大切です。

Q. 食べてはいけないものはありますか?

A. 一律に禁止される食品はなく、病状や狭窄の有無によって適切な食事は異なります。活動期や狭窄がある場合は低脂肪・低残渣の食事が基本となりますが、寛解期に過度に制限すると栄養不足につながります。主治医や管理栄養士と相談しながら、自分に合った食事を見つけていきましょう。

Q. 妊娠・出産はできますか?

A. 多くの方が妊娠・出産をしています。病気が落ち着いた寛解期に妊娠することで、経過がより安定しやすいとされます。薬によって妊娠中の扱いが異なるため、自己判断で中止せず、妊娠を考えた段階で主治医に相談してください。

Q. 子どもに遺伝しますか?

A. 家族に患者がいると発症の可能性はやや高くなりますが、親から子へ必ず遺伝する病気ではありません。複数の遺伝的素因と環境因子が関わる病気と考えられています。心配な場合は主治医や遺伝カウンセリングに相談できます。

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最終更新: 2026-10-18。発行: 株式会社Medi Face。本ページは、MSDマニュアル プロフェッショナル版、難病情報センター、各学会の診断基準・診療ガイドラインなどの公的・専門的情報を参照して作成した一般的な医学情報であり、診断・治療の代替ではありません。個別の診療は主治医・専門医にご相談ください。参考: MSDマニュアル プロフェッショナル版、難病情報センター。記載内容に誤りや古い情報を見つけた場合はお問い合わせからお知らせください。