潰瘍性大腸炎

Ulcerative Colitis

潰瘍性大腸炎(Ulcerative Colitis)|潰瘍性大腸炎は、大腸の粘膜に慢性的な炎症が起こり、びらんや潰瘍ができる原因不明の炎症性腸疾患です。10〜30歳代の若い世代で発症することが多い一方、高齢での発症も増えています。血便・下痢・腹痛などの症状が良くなったり悪くなったりを繰り返す(再燃と寛解)ため、学業・就労・妊娠出産など人生の長い期間にわたって生活に影響します。

潰瘍性大腸炎の要点

潰瘍性大腸炎は、大腸の粘膜に慢性の炎症が起こり、びらんや潰瘍ができる原因不明の炎症性腸疾患で、国の指定難病です。血便・下痢・腹痛などの症状が、良くなったり悪くなったりを繰り返すのが特徴です。

別名・略称UC、大腸潰瘍性炎症、難治性炎症性腸疾患(IBDの一つ)、Ulcerative Colitis
分野消化器・肝胆膵疾患
好発年齢10〜30歳代に多いが、高齢での発症もある
遺伝形式単一の遺伝形式には従わない(原因不明で、遺伝・環境・免疫など複数の要因が関与するとされる)
主な症状血便、下痢、腹痛、発熱、体重減少など(再燃と寛解を繰り返す)
主な検査大腸内視鏡検査と生検、血液検査、便検査(感染性腸炎の除外)
主な治療5-ASA製剤、ステロイド、免疫調節薬、生物学的製剤など。重症例では手術(大腸全摘)も検討
受診する主な診療科消化器内科(消化器内科・胃腸科・肛門科など)

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潰瘍性大腸炎とは

潰瘍性大腸炎(Ulcerative Colitis: UC)は、主に大腸の粘膜から粘膜下層にかけて、びまん性(広く連続した)の炎症を生じる慢性疾患です。炎症は原則として直腸から始まり、口側(奥)へ途切れることなく連続して広がるのが特徴です。この点でクローン病と区別されます。クローン病は、口から肛門まで消化管のどこにでも飛び石状に病変ができ、炎症が腸管の壁の全層に及びます。両者をあわせて炎症性腸疾患(IBD)と呼びます。本疾患の中心は大腸の炎症で、診療では内視鏡検査と病理組織検査による評価、そして薬物療法による炎症のコントロールが柱となります。一部の患者さんでは、関節・皮膚・眼・胆管など腸以外の臓器にも合併症がみられます。

分類にはいくつかの軸があります。①病変の範囲:直腸炎型、左側大腸炎型(脾弯曲部まで)、全大腸炎型、および例外的な右側・区域性大腸炎に分けられ、範囲が広いほど重症化や発がんのリスクが高くなります。②重症度:排便回数、顕血便、発熱、頻脈、貧血、赤沈やCRPなどで軽症・中等症・重症に分け、重症のうち特に激しいものを劇症とします。日本の基準は英国のTruelove-Wittsの基準をもとにしています。③臨床経過:再燃寛解型、慢性持続型、急性劇症型、初回発作型に分けられます。④治療反応性:ステロイド抵抗例、ステロイド依存例といった区分も治療選択に重要です。疾患概念は19世紀の英国で確立し、日本では1970年代から厚生省(当時)の特定疾患に指定され、研究班による診断基準・治療指針が定期的に改訂されてきました。2000年代以降は生物学的製剤など新しい薬剤が次々と登場し、治療目標も「症状の改善」から「粘膜治癒を含む深い寛解の維持」へと移っています。

潰瘍性大腸炎の疫学・患者数

日本の患者数は1970年代以降一貫して増加しており、全国疫学調査では20万人を超えると推計され、指定難病の中で最も患者数の多い疾患のひとつです(医療費助成の受給者数は重症度基準の導入により実際の患者数より少なくなっています)。欧米に比べ有病率はなお低いものの、食生活の欧米化や衛生環境の変化などとの関連が指摘されています。発症年齢のピークは男性で20〜24歳、女性で25〜29歳前後とされますが、小児から高齢者まで幅広く発症し、近年は高齢発症や高齢の患者が増加しています。性差は大きくなく、男女ほぼ同程度とされます。家族内発症は一部にみられ、患者の近親者は一般より発症しやすいことが知られていますが、単一遺伝子で遺伝する疾患ではありません。

潰瘍性大腸炎の原因・病態生理

原因はまだ完全には解明されていませんが、遺伝的な体質(疾患感受性)、腸内細菌叢の変化、食事などの環境因子が組み合わさり、腸管粘膜の免疫が過剰に反応し続けることで発症すると考えられています。ゲノム研究では、HLA領域をはじめIBDに関連する多数の感受性遺伝子領域が報告されており、日本人ではHLA-DRB1*15:02との関連が知られています。ただし個々の遺伝子の影響は小さく、親から子へ決まった形式で遺伝するものではありません。環境因子としては、喫煙が発症を抑制する方向に、また虫垂切除が発症リスク低下と関連することが疫学的に報告されていますが、健康上の理由から喫煙は決して勧められません。腸内細菌叢の多様性の低下(ディスバイオーシス)も病態に関与するとされます。

病態の中心は、大腸粘膜のバリア機能の破綻と免疫応答の制御異常です。粘膜表面を覆う粘液層や上皮細胞間の結合が弱まると、腸内細菌やその成分が粘膜内に入り込みやすくなり、樹状細胞やマクロファージなどの自然免疫細胞が活性化します。これに続いてT細胞を中心とする獲得免疫が持続的に働き、TNF-α、IL-13、IL-23/IL-17系などの炎症性サイトカインが産生され、好中球が粘膜に集まって陰窩膿瘍を形成し、上皮が傷害されてびらん・潰瘍が生じます。炎症を収束させる制御性T細胞などのブレーキ機構もうまく働かず、炎症が慢性化します。白血球が血管から腸粘膜へ移動するにはα4β7インテグリンなどの接着分子が、細胞内でサイトカインの信号を伝えるにはJAK-STAT経路が関わっており、現在の治療薬の多くはこうした分子を標的として開発されています。

潰瘍性大腸炎の症状

  • 血便・粘血便: 最も特徴的な症状で、便に血液や粘液が混じります。炎症が強いと便の成分がほとんどなく血液と粘液だけが出ることもあります。
  • 下痢・排便回数の増加: 水様便や軟便が続き、重症では1日10回以上になることもあります。夜間にも排便で目が覚めるのは活動性が高いサインです。
  • 便意切迫感: 急に強い便意が起こり我慢しにくくなる症状で、外出や通勤の大きな妨げになります。
  • しぶり腹(テネスムス): 便意があるのに少量しか出ない、出しても残っている感じが続く症状で、直腸の炎症を反映します。
  • 腹痛: 排便前に左下腹部を中心とした差し込むような痛みが出やすく、排便で軽くなることが多いです。持続する強い腹痛は合併症の可能性があります。
  • 発熱: 中等症〜重症で37.5℃以上の発熱がみられ、全身性の炎症を示します。高熱の場合は感染症の合併にも注意が必要です。
  • 貧血・倦怠感: 出血による鉄欠乏や慢性炎症のため貧血となり、だるさ・動悸・息切れが出ます。
  • 体重減少・低栄養: 食欲低下や腸からのたんぱく質漏出により体重やアルブミン値が低下します。小児では成長障害の原因になります。
  • 関節の痛み・腫れ: 腸管外合併症として末梢関節炎や仙腸関節炎・脊椎炎が起こることがあり、腸の活動性と連動するものとしないものがあります。
  • 皮膚症状: すねなどにできる痛みを伴う赤いしこり(結節性紅斑)や、急速に広がる潰瘍(壊疽性膿皮症)が合併することがあります。
  • 眼の症状: ぶどう膜炎や上強膜炎により、目の充血・痛み・まぶしさ・視力低下が起こることがあります。
  • 口内炎: アフタ性口内炎が繰り返しできることがあり、病勢の悪化とともに出やすくなります。

潰瘍性大腸炎の経過と合併症

多くの患者さんは、症状が落ち着く寛解期と悪化する活動期(再燃)を繰り返す再燃寛解型の経過をとります。再燃のきっかけとして、服薬中断、感染症、NSAIDs(解熱鎮痛薬)の使用、強いストレスや過労などが挙げられますが、明らかな誘因のないことも少なくありません。直腸炎型で発症しても、経過中に炎症範囲が口側へ広がる例があります。少数ながら、初回から重症・劇症で発症し短期間で手術が必要になる急性劇症型や、寛解に入らず症状が6か月以上続く慢性持続型もあります。一方、適切な治療で長期間寛解を維持できる方も多く、粘膜の炎症まで抑え込む(粘膜治癒)ことが再燃や手術の減少につながるとされています。

重症例では生命に関わる腸管合併症として、大量出血、中毒性巨大結腸症(大腸が著しく拡張し全身状態が悪化する状態)、穿孔があり、緊急手術の対象となります。免疫を抑える治療中には、サイトメガロウイルス腸炎やクロストリディオイデス・ディフィシル感染症の合併が病状悪化の原因となることがあります。長期経過では、病変範囲が広く罹病期間が長いほど大腸がん(colitis-associated cancer)およびその前段階である異形成のリスクが上昇します。腸管外合併症としては、前述の関節・皮膚・眼病変のほか、原発性硬化性胆管炎(PSC)、静脈血栓塞栓症(深部静脈血栓症・肺塞栓症)、ステロイド治療に伴う骨粗鬆症や大腿骨頭壊死、成長障害などがあります。

潰瘍性大腸炎の診断・診断基準

診断は、厚生労働科学研究費補助金 難治性疾患政策研究事業「難治性炎症性腸管障害に関する調査研究」班(以下、研究班)の診断基準に沿って行われます。まず持続性または反復性の粘血便・血便などの臨床症状があり、次に内視鏡検査で直腸から連続するびまん性の炎症所見を確認し、生検による病理組織所見で裏づけます。同時に、細菌性・寄生虫性などの感染性腸炎、虚血性腸炎、薬剤性腸炎、クローン病など、似た症状や所見を示す疾患を除外することが不可欠です。初回の診察だけで確定できない場合は「疑診」として経過を観察し、再検査で確定することもあります。診断後は病変範囲・重症度・臨床経過を評価し、治療方針の決定に役立てます。

  • 問診・身体診察: 排便回数、血便の有無、発症からの期間、服薬歴(NSAIDs・抗菌薬)、渡航歴、家族歴、喫煙歴などを確認します。脈拍・体温・腹部の圧痛や膨満は重症度評価に直結します。
  • 便検査(培養・毒素・虫卵): カンピロバクター、サルモネラ、腸管出血性大腸菌、赤痢アメーバなどの感染性腸炎や、C. ディフィシル毒素を除外するために行います。再燃時にも感染の合併確認に重要です。
  • 血液検査: 貧血、白血球数、CRP、赤沈、アルブミン、電解質などで炎症の程度と栄養状態を評価します。CRPが正常でも粘膜の炎症が残っている場合があります。
  • 便中カルプロテクチン・血清LRG: 腸の炎症を反映するバイオマーカーで、病勢の把握や内視鏡検査を行うタイミングの判断に用いられます。単独での確定診断はできません。
  • 大腸内視鏡検査: 血管透見像の消失、粘膜の粗糙・細顆粒状変化、易出血性(接触で出血しやすい)、膿性粘液の付着、びらん・潰瘍が直腸から連続して認められます。Mayo内視鏡サブスコアやUCEISで重症度を評価し、重症例では前処置を控えて観察範囲を限定するなど安全に配慮します。
  • 生検・病理組織検査: 粘膜全層へのびまん性炎症細胞浸潤、陰窩膿瘍、杯細胞の減少、陰窩のねじれや萎縮などの慢性変化が特徴です。サイトメガロウイルス感染や異形成・がんの評価にも用いられます。
  • 注腸X線造影検査: 内視鏡が困難な場合などに、粘膜のびまん性変化、ハウストラ(大腸のひだ)の消失による鉛管状変化、腸管の短縮などを確認します。
  • 腹部X線・CT検査: 重症・劇症例で大腸の拡張(中毒性巨大結腸症)や穿孔の有無、腸管壁の肥厚、他疾患の評価に用います。
  • 臨床的重症度評価(研究班基準・Mayoスコア): 排便回数、顕血便、発熱、頻脈、貧血、赤沈またはCRPから軽症・中等症・重症を判定します。治療選択と指定難病の医療費助成の判定に用いられます。

潰瘍性大腸炎と鑑別すべき疾患

  • 感染性腸炎: カンピロバクター、サルモネラ、腸管出血性大腸菌、赤痢アメーバなどは血便を伴い内視鏡所見も似ることがあるため、便培養・生検・血清検査と経過で除外します。
  • クローン病: 縦走潰瘍や敷石像、非連続性の病変、小腸・肛門病変(痔瘻など)、肉芽腫の存在が鑑別点ですが、大腸に限局した例では区別が難しく「分類不能型腸炎」とされることもあります。
  • 虚血性腸炎: 高齢者や便秘後に突然の腹痛と血便で発症し、直腸は保たれ下行結腸〜S状結腸に区域性の病変をつくり、多くは短期間で改善する点が異なります。
  • 薬剤性腸炎: NSAIDsや抗菌薬の使用歴があり、中止で改善することや、抗菌薬起因性の出血性腸炎・偽膜性腸炎の所見から鑑別します。
  • 腸管ベーチェット病: 回盲部の深い打ち抜き様潰瘍が典型で、口腔内アフタ、外陰部潰瘍、眼病変、皮膚症状などの全身所見が鑑別の手がかりになります。
  • 過敏性腸症候群・顕微鏡的大腸炎: 過敏性腸症候群は血便や内視鏡的炎症を伴わず、顕微鏡的大腸炎は内視鏡上ほぼ正常で生検により診断される点が異なります。

潰瘍性大腸炎の治療

現時点で病気そのものを根本的に治す内科治療はありませんが、多くの方は薬物療法により症状のない寛解状態を保てます。治療は研究班の「治療指針」や日本消化器病学会の「炎症性腸疾患(IBD)診療ガイドライン」に沿って、病変範囲・重症度・これまでの治療への反応(ステロイド抵抗性・依存性)を踏まえて段階的に選択されます。治療は、活動期に炎症を鎮める寛解導入療法と、その状態を長く保つ寛解維持療法の二段階で考えます。目標は、症状の消失に加えて、内視鏡で粘膜の炎症が治まった状態(粘膜治癒)を目指し、ステロイドに頼らない長期寛解を得ることです。重症・劇症例は入院のうえ専門施設で治療し、内科治療の効果が乏しい場合や重大な合併症がある場合は時機を逸さず外科手術を検討します。薬剤ごとに効果発現の速さ、投与経路、感染症などの副作用、妊娠への影響が異なるため、生活状況や希望も含めて主治医と十分に相談して決めることが大切です。

  • 5-アミノサリチル酸(5-ASA)製剤: メサラジンやサラゾスルファピリジンが軽症〜中等症の寛解導入と寛解維持の基本薬です。内服に加え、直腸・左側大腸の病変には坐剤や注腸の局所製剤が有効で、まれに薬剤自体への不耐(発熱・下痢の悪化など)がみられることがあります。
  • 副腎皮質ステロイド: 5-ASAで効果不十分な中等症以上の活動期に、プレドニゾロンの内服や点滴、局所製剤(注腸・フォーム剤など)で寛解導入に用います。長期使用は骨粗鬆症・感染症・糖尿病・白内障などの副作用があるため、寛解維持には用いず、減量・中止を目指します。
  • チオプリン製剤(免疫調節薬): アザチオプリンやメルカプトプリンは、ステロイド依存例の寛解維持などに用いられます。日本人では重い白血球減少や脱毛と関連するNUDT15遺伝子多型の検査を開始前に行うことが推奨されています。
  • カルシニューリン阻害薬: ステロイド抵抗性の中等症〜重症例に対し、タクロリムス内服などが寛解導入に用いられます。血中濃度を測定しながら調整し、腎機能障害や感染症に注意します。
  • 生物学的製剤: 抗TNF-α抗体、腸管への白血球の移動を抑える抗α4β7インテグリン抗体、IL-12/23やIL-23を標的とする抗体などがあり、中等症〜重症や既存治療で効果不十分な場合に寛解導入から維持まで用いられます。点滴または皮下注射で投与し、開始前に結核やB型肝炎の検査が必要です。
  • 低分子化合物(JAK阻害薬など): JAK阻害薬は内服で効果発現が比較的早い薬剤で、中等症〜重症の難治例に用いられますが、帯状疱疹などの感染症や血栓症への注意が必要です。中等症に用いる経口α4インテグリン阻害薬など、作用機序の異なる薬剤も登場しています。
  • 血球成分除去療法: 血液を体外に取り出し、活性化した白血球などを専用カラムで除去して戻す治療で、日本で広く行われています。薬物療法の効果不十分例やステロイドを避けたい場合などの選択肢となり、副作用が比較的少ないとされます。
  • 外科手術: 大量出血・穿孔・中毒性巨大結腸症・大腸がんや高度異形成は絶対的適応、内科治療抵抗例や薬の副作用、QOLの著しい低下、小児の成長障害などは相対的適応です。標準術式は大腸全摘・回腸嚢肛門(管)吻合術で、多くは一時的な人工肛門を経て肛門から排便できるようになりますが、術後に回腸嚢炎が起こることがあります。
  • 栄養療法・支持療法: 重症期は絶食・中心静脈栄養で腸を安静にすることがあり、貧血には鉄剤、ステロイド使用中には骨粗鬆症対策、入院中は血栓予防などを行います。止痢薬や抗コリン薬は中毒性巨大結腸症を誘発しうるため重症時は慎重に扱います。

潰瘍性大腸炎の予後・長期フォロー

潰瘍性大腸炎そのものによる生命予後は、適切な治療と経過観察のもとでは一般人口とほぼ同等と考えられています。死亡につながりうるのは、主に劇症例の重篤な合併症と、長期経過での大腸がんです。いずれも治療の進歩と手術時期の適正化によって減少しています。多くの方は寛解を維持しながら、就学・就労・結婚・出産など通常の社会生活を送っています。一方で、再燃への不安、便意切迫による外出制限、通院や点滴のための時間的負担などがQOLを下げる要因になります。手術を受けた方も多くは日常生活に復帰できます。回腸嚢肛門吻合術後は排便回数がやや多くなります。大腸を全摘すれば大腸炎の再燃はなくなり、大腸がんのリスクも大幅に低下します。ただし、肛門側に残るわずかな粘膜や回腸嚢には、術後も定期的な検査が勧められる場合があります。

長期フォローアップでは、定期的な診察と血液・便のバイオマーカーで病勢を確認し、必要に応じて内視鏡で粘膜の状態を評価します。発がんへの備えとして、全大腸炎型・左側大腸炎型では発症からおおむね8年以上経過したら、色素内視鏡や拡大内視鏡などを用いた定期的なサーベイランス内視鏡(一般に1〜2年ごと)が推奨されています。PSCを合併する場合は発がんリスクがより高く、診断時から毎年の内視鏡検査が勧められます。また免疫抑制治療中は、感染症対策(不活化ワクチンの接種、生ワクチンの可否確認)、ステロイド使用歴がある場合の骨密度測定、肝機能・腎機能・血球数の定期検査が大切です。症状がない時期にも通院と服薬を続けることが、再燃と合併症を防ぐ基本です。

潰瘍性大腸炎の日常生活の注意点と公的支援(医療費助成)

寛解期には厳しい食事制限は基本的に不要で、栄養バランスのよい食事を心がけます。活動期には、脂肪分の多い食事、香辛料、アルコール、冷たい飲み物など腸への刺激が強いものを控え、消化のよいものを少量ずつとるとよいでしょう。食べ物との相性には個人差があるため、症状日記をつけて自分に合わない食品を把握するのも一つの方法です。解熱鎮痛薬(NSAIDs)は再燃の誘因となることがあるため、市販薬を使う前に主治医や薬剤師に相談してください。症状が落ち着いても自己判断で薬を減らしたり中止したりしないことが最も重要です。十分な睡眠と適度な運動、ストレスとの付き合い方も体調管理に役立ちます。外出時は事前にトイレの場所を確認し、替えの下着を携帯するなどの工夫が安心につながります。妊娠・出産は、寛解期に計画すれば多くの方が可能であり、多くの治療薬は妊娠中も継続が勧められますが、薬剤によって対応が異なるため妊娠を考えた段階で主治医に相談しましょう。遺伝については、家族の発症リスクは一般よりやや高いものの大多数は発症せず、過度な心配は不要です。不安が強い場合は遺伝カウンセリングを受けることもできます。

利用できる制度・相談窓口

潰瘍性大腸炎は指定難病であり、研究班の重症度分類で中等症以上と判定された方、または軽症でも月ごとの医療費総額が一定額を超える月が年間に一定回数以上ある方(軽症高額該当)は、医療費助成の対象となります。助成を受けると医療費の自己負担割合が軽減され、所得に応じた月額上限額が設定されます。申請には難病指定医による臨床調査個人票(診断書)が必要で、窓口はお住まいの都道府県・指定都市の担当窓口(保健所など)です。18歳未満(継続の場合は20歳未満まで)では小児慢性特定疾病の医療費助成の対象となります。また、医療保険の高額療養費制度、障害者総合支援法による福祉サービス(難病患者も対象)、永久的な人工肛門(ストーマ)を造設した場合の身体障害者手帳(ぼうこう又は直腸の機能障害)やストーマ用具の給付があります。病状や人工肛門の状態により障害年金の対象となる場合もあります。相談窓口としては、各都道府県の難病相談支援センター、病院の医療相談室(医療ソーシャルワーカー)、ハローワークの難病患者就職サポーター、IBDの患者会などがあり、就労や学業との両立についても相談できます。

潰瘍性大腸炎に伴う心のケア・心理社会的支援

潰瘍性大腸炎は若い時期に発症し長く付き合う病気であるため、心理的な負担を抱える方が少なくありません。いつ再燃するかわからない不安、トイレの心配から外出・通勤・旅行を避けてしまう生活の制限、排便に関わる症状を周囲に打ち明けにくい恥ずかしさ、進学・就職・恋愛・結婚・妊娠への不安などは、この病気に特有の悩みです。また、外見からはわかりにくい病気のため、職場や学校で理解を得にくく孤立感を感じることもあります。IBDの患者さんでは抑うつや不安障害の頻度が高いことが報告されており、心の状態と腸の症状は互いに影響し合う(脳腸相関)と考えられています。ステロイドの使用中に気分の変動や不眠が現れることもあります。気分の落ち込み、興味の喪失、眠れない状態が続く場合は、一人で抱え込まず主治医に伝えてください。必要に応じて心療内科・精神科、臨床心理士、医療ソーシャルワーカーと連携でき、患者会で同じ病気の仲間と経験を共有することも大きな支えになります。ご家族も病気について正しく理解し、本人のペースを尊重しながら支えることが大切です。

Medi Faceでは、慢性疾患に伴うこころの不調についてのオンライン相談も行っています。お問い合わせはこちら。

潰瘍性大腸炎の受診の目安

  • 血便や粘液の混じった下痢が2週間以上続く、または繰り返す場合は、消化器内科を受診してください。
  • 治療中に排便回数や血便が増える、夜間にも排便で目が覚めるなど再燃が疑われるときは、早めに主治医に連絡してください。
  • 38℃以上の発熱、強い腹痛、お腹の張りが急に強くなった場合は、中毒性巨大結腸症や穿孔の可能性があるため救急受診を検討してください。
  • 大量の血便、ふらつき・立ちくらみ・動悸など貧血が進んだ症状がある場合は、速やかに医療機関を受診してください。
  • 免疫を抑える薬の使用中に、発熱・咳・息苦しさ・帯状の発疹などが出た場合は、感染症の可能性があるため早めに相談してください。
  • 片脚の急な腫れや痛み、突然の胸痛・息切れがある場合は、血栓症の可能性があるため直ちに救急受診してください。

潰瘍性大腸炎についてのよくある質問

Q. 潰瘍性大腸炎は治りますか?

A. 現時点では内科的に完治させる治療はありませんが、多くの方は薬物療法で症状のない寛解状態を長く維持でき、通常の生活を送っています。また、大腸を全摘する手術を受ければ大腸炎そのものは再燃しなくなります。治療法は年々進歩しているため、主治医と相談しながら自分に合った治療を続けることが大切です。

Q. 子どもに遺伝しますか?

A. 遺伝的な体質が関係しているため、家族の発症リスクは一般よりやや高いとされますが、親から子へ決まった確率で遺伝する病気ではなく、患者さんのお子さんの大多数は発症しません。過度に心配する必要はありませんが、不安があれば主治医や遺伝カウンセリングで相談できます。

Q. 妊娠・出産はできますか?

A. 寛解期に妊娠を計画すれば、多くの方が健康に出産されています。妊娠中に病気が悪化すると母体と胎児の両方に影響するため、多くの治療薬は妊娠中も継続することが勧められますが、薬によって扱いが異なります。妊娠を希望したら自己判断で薬をやめず、早めに主治医に相談してください。

Q. 大腸がんになりやすいのですか?

A. 病変範囲が広く罹病期間が長い場合や、炎症が続いている場合、PSCを合併している場合には大腸がんのリスクが高まります。そのため、発症から一定期間が経過したら定期的なサーベイランス内視鏡検査を受けることが推奨されています。炎症をしっかり抑えることと定期検査を継続することで、早期発見・早期治療が可能になります。

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最終更新: 2026-10-18。発行: 株式会社Medi Face。本ページは、MSDマニュアル プロフェッショナル版、難病情報センター、各学会の診断基準・診療ガイドラインなどの公的・専門的情報を参照して作成した一般的な医学情報であり、診断・治療の代替ではありません。個別の診療は主治医・専門医にご相談ください。参考: MSDマニュアル プロフェッショナル版、難病情報センター。記載内容に誤りや古い情報を見つけた場合はお問い合わせからお知らせください。