無βリポタンパク血症

Abetalipoproteinemia

無βリポタンパク血症(Abetalipoproteinemia)|無βリポタンパク血症は、腸管と肝臓で脂質を運ぶリポタンパクを作れない常染色体潜性(劣性)遺伝の疾患で、ごくまれにしかみられません。乳児期の脂肪便や体重増加不良で始まり、ビタミンEなど脂溶性ビタミンが不足するため、治療しないと小児期から思春期以降に運動失調などの神経障害や網膜変性が進みます。早期に診断して食事療法と高用量ビタミン補充を続ければ、神経・眼の合併症を予防または遅らせられることが期待されます。

無βリポタンパク血症の要点

無βリポタンパク血症は、MTTP遺伝子の異常でアポBを含むリポタンパクが作れず、脂肪と脂溶性ビタミンの吸収が障害される常染色体潜性の先天性脂質代謝異常症です。乳児期の脂肪便で始まり、未治療では運動失調や網膜変性が進むため、日本では指定難病に位置づけられています。

別名・略称Bassen-Kornzweig症候群、バッセン・コルンツヴァイク症候群、無βリポ蛋白血症、アベータリポタンパク血症、ABL
分野代謝疾患
遺伝形式常染色体潜性(劣性)遺伝
原因遺伝子MTTP(ミクロソームトリグリセリド転送タンパクをコード)
好発年齢乳児期に脂肪便・体重増加不良で発症
主な症状脂肪便、運動失調などの神経障害、網膜変性、有棘赤血球
主な検査血清総コレステロール・中性脂肪の著明な低値、apoBの欠如または痕跡程度
主な治療脂肪制限を含む食事療法と高用量ビタミンE等の脂溶性ビタミン補充

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無βリポタンパク血症とは

無βリポタンパク血症(abetalipoproteinemia;ABL)は、ミクロソームトリグリセリド転送タンパク(MTP)の機能欠損により、アポリポタンパクB(apoB)を含むリポタンパク(小腸のカイロミクロン、肝臓のVLDL、その代謝産物であるLDL)が血中にほとんど存在しなくなる先天性脂質代謝異常症です。血清の総コレステロールとトリグリセリド(中性脂肪)が著しく低く、apoBは検出されないか痕跡程度になります。病態の中心は、食事中の脂肪と脂溶性ビタミン(A・D・E・K)の吸収・輸送の障害です。とくにビタミンE欠乏が神経系と網膜の進行性障害の主因と考えられています。

本症は1950年にBassenとKornzweigが、網膜色素変性に似た網膜症、運動失調、赤血球の形態異常(有棘赤血球)を示す症例として報告しました。そのためBassen-Kornzweig症候群とも呼ばれます。のちに血中βリポタンパク(LDL)の欠如が確認され、現在の病名になりました。1990年代にはMTPをコードするMTTP遺伝子の異常が原因と明らかになっています。病型分類は確立していません。ただし、遺伝子変異の種類によってMTPの残存活性に差があり、症状の重さや発症時期には幅があります。apoB遺伝子のホモ接合体変異による家族性低βリポタンパク血症1(ホモ接合体)は臨床像がよく似ています。両者は鑑別上ひとまとまりに扱われることもありますが、日本の指定難病では別の疾患として扱われています。

無βリポタンパク血症の疫学・患者数

世界的にもきわめてまれで、文献報告は100例前後またはそれ未満とされます。日本での報告もごく少数にとどまり、正確な患者数はわかっていません。常染色体潜性遺伝のため、近親婚の多い集団で報告がやや多い傾向があります。性差はないと考えられています。多くは乳児期に脂肪便や体重増加不良で気づかれます。一方、消化器症状が軽いと診断が遅れ、小児期〜成人期に運動失調や視力障害、偶然見つかった極端な低コレステロール血症をきっかけに診断される例もあります。まれな疾患であるため、診断されないまま経過している患者がいる可能性も指摘されています。

無βリポタンパク血症の原因・病態生理

原因は第4染色体長腕に位置するMTTP遺伝子の両アレルの病的バリアントで、常染色体潜性遺伝の形式をとります。MTPは小腸上皮細胞(エンテロサイト)と肝細胞の小胞体内腔に存在し、トリグリセリドやコレステロールエステル、リン脂質を新生apoBに受け渡してリポタンパク粒子を組み立てる役割を担います。MTPが働かないとapoB(小腸ではapoB-48、肝臓ではapoB-100)に脂質が載らず、apoBは分解されます。その結果、カイロミクロンとVLDLが分泌されず、VLDLから生じるLDLも作られません。保因者である両親(ヘテロ接合体)の血清脂質は通常正常範囲です。この点は、片親もLDLが低いことが多い家族性低βリポタンパク血症との区別に役立ちます。免疫学的な機序は関与しません。

発症のしくみは次の3つに整理できます。第1に、脂肪吸収障害です。小腸上皮細胞は食事由来の脂肪を取り込めますが、カイロミクロンとして送り出せません。このため上皮内に脂肪滴がたまり、脂肪便・下痢・腹部膨満・成長障害を引き起こします。第2に、脂溶性ビタミンの輸送障害です。ビタミンEはカイロミクロンで吸収され、肝臓からVLDLにのって全身に運ばれるため、本症では重度に欠乏します。抗酸化作用をもつビタミンEが不足すると、脊髄後索・脊髄小脳路・末梢神経の軸索や網膜の視細胞が酸化ストレスで障害されると考えられています。ビタミンAの欠乏は網膜症と夜盲を悪化させ、ビタミンKの欠乏は凝固障害、ビタミンDの欠乏は骨代謝異常につながります。第3に、細胞膜脂質組成の異常です。赤血球膜の脂質構成が変化して有棘赤血球(アカントサイト)が出現し、軽い溶血がみられることがあります。また肝臓ではVLDLとして脂肪を送り出せないため脂肪肝が生じ、一部では肝線維化に進むことがあります。

無βリポタンパク血症の症状

  • 脂肪便・慢性下痢: 乳児期から悪臭のある脂っぽい大量の便がみられます。脂肪の多い食事で悪化し、脂肪を控えると軽くなる傾向があります。
  • 体重増加不良・成長障害: 脂肪とエネルギーの吸収不足により、乳幼児期に体重や身長の伸びが鈍くなります。食事療法で改善することが多いです。
  • 腹部膨満・嘔吐: 脂肪吸収障害に伴って腹部の張りや嘔吐、食欲不振がみられることがあります。
  • 深部腱反射の消失: 末梢神経障害と脊髄後索の障害を反映し、比較的早い段階からアキレス腱反射などが低下・消失します。
  • 深部感覚障害: 振動覚や関節位置覚が低下し、暗い場所や目を閉じたときにふらつきやすくなります(ロンベルグ徴候陽性)。
  • 運動失調・歩行障害: 脊髄小脳路と後索の変性により、歩行時のふらつき、構音障害、手の動きのぎこちなさが進行します。未治療では歩行が困難になることがあります。
  • 筋力低下・筋障害: 末梢神経障害やビタミンE欠乏性ミオパチーにより筋力低下が起こり、側弯や凹足などの骨格変形を伴うことがあります。
  • 網膜色素変性様網膜症: 夜盲で始まり、視野狭窄、色覚異常、視力低下へ進むことがあります。網膜色素変性症に似た眼底所見を示します。
  • 出血傾向: ビタミンK欠乏による凝固因子の低下で、鼻出血、あざ、手術時の出血が起こりやすくなります。
  • 貧血: 有棘赤血球による軽い溶血に加え、鉄や葉酸の吸収不良が重なって貧血がみられることがあります。
  • 肝腫大・肝機能異常: 脂肪肝によるトランスアミナーゼ(AST・ALT)の軽度上昇がよくみられます。まれに肝線維化や肝硬変に進む例が報告されています。

無βリポタンパク血症の経過と合併症

典型例では、新生児期〜乳児期に脂肪便と体重増加不良で発症します。幼児期以降は脂肪摂取を自然に避けるようになり、消化器症状が目立たなくなることもあります。治療されない場合、脂溶性ビタミン欠乏による神経症状は幼児期後半〜学童期に腱反射の消失として現れます。その後、10歳代から20歳代にかけて深部感覚障害、運動失調、筋力低下が進行し、成人期には歩行に介助や車いすが必要になる例が報告されています。網膜症も同じ時期に夜盲から始まり、視野狭窄や視力低下へ進みます。一方、乳児期から食事療法と高用量ビタミンE・Aの補充を始めた例では、神経・網膜障害の発症を防いだり遅らせたりできたとする報告があります。すでに生じた神経障害は、治療で進行が止まる、または一部改善することはあっても、完全に回復するとは限りません。

主な合併症は、進行性の脊髄小脳変性様の神経障害、末梢神経障害、網膜変性による視覚障害、ビタミンK欠乏による出血(手術・外傷時や新生児期を含む)、ビタミンD欠乏による骨量減少・くる病/骨軟化症、脂肪肝と肝線維化です。さらに側弯症・凹足などの骨格変形、ビタミンE欠乏に関連する心筋障害や不整脈(まれ)、鉄・葉酸欠乏性貧血も起こりえます。女性では、妊娠中に脂溶性ビタミンの需要が増えて欠乏が悪化しやすくなります。一方でビタミンAの過剰は胎児に影響するおそれがあるため、専門医による用量調整が必要です。

無βリポタンパク血症の診断・診断基準

診断の手がかりは、乳児期の脂肪便・体重増加不良に極端な低コレステロール・低トリグリセリド血症が加わることです。ほかに、原因不明の運動失調や網膜色素変性様網膜症、末梢血塗抹標本での有棘赤血球も重要です。まず血清脂質とリポタンパク分画、apoBを測定し、apoB含有リポタンパクがほぼ欠如していることを確認します。あわせて脂溶性ビタミン(A・E・25-ヒドロキシビタミンD)、プロトロンビン時間/INR、肝機能を評価します。次に、家族性低βリポタンパク血症のホモ接合体や複合ヘテロ接合体、カイロミクロン停滞病、続発性の低脂血症(重度の栄養障害、吸収不良症候群、肝不全、甲状腺機能亢進症など)を除外します。両親の脂質値も参考になります。確定診断にはMTTP遺伝子解析が有用です。日本の指定難病の診断基準では、臨床症状、血清脂質・apoBの検査所見、鑑別診断、遺伝学的検査を組み合わせて判定します。詳細な基準は難病情報センターや日本動脈硬化学会などが示す最新版を確認してください。

  • 血清脂質検査: 総コレステロールが著しく低く(おおむね50 mg/dL未満の報告が多い)、トリグリセリドは測定感度付近まで低下します。LDLコレステロールはほぼ検出されません。
  • アポリポタンパクB測定・リポタンパク分画: apoBが検出されないか痕跡程度で、カイロミクロン・VLDL・LDL分画が欠如します。脂肪負荷後にもトリグリセリドが上昇しないことが特徴です。
  • 脂溶性ビタミン・凝固検査: 血清ビタミンEは著明に低く、ビタミンA・25-ヒドロキシビタミンDも低値を示しがちです。PT延長/INR上昇はビタミンK欠乏を示します。血中ビタミンEは輸送体の欠如により低値になりやすいため、治療効果の判定には注意が必要です。
  • 末梢血塗抹標本: 赤血球表面に不規則な突起をもつ有棘赤血球(アカントサイト)が多数みられ、診断の重要な手がかりです。赤沈が著しく遅いことも知られています。
  • 上部消化管内視鏡・十二指腸生検: 十二指腸粘膜が白っぽく見え、生検では脂肪滴で満たされた空胞状の小腸上皮細胞がみられます。吸収不良の原因の推定に役立ちます。
  • MTTP遺伝子解析: MTTP遺伝子の両アレルに病的バリアントを確認すれば確定診断となり、APOB遺伝子異常による家族性低βリポタンパク血症との鑑別に有用です。保険診療での実施可否は施設で確認が必要です。
  • 神経学的評価(神経伝導検査・体性感覚誘発電位・MRI): 感覚優位の軸索性末梢神経障害や後索機能の低下を評価します。MRIは他の脊髄小脳疾患の除外や経過観察に用いられます。
  • 眼科検査(眼底・網膜電図・視野): 網膜色素変性様の変化、網膜電図の振幅低下、視野狭窄を評価し、早期網膜症の検出と経過観察に用います。
  • 肝機能・腹部画像検査: AST・ALTの上昇や、超音波・CT・MRIでの脂肪肝を確認します。必要に応じてエラストグラフィなどで線維化を評価します。

無βリポタンパク血症と鑑別すべき疾患

  • 家族性低βリポタンパク血症1(ホモ接合体): 臨床像はほぼ同じですが、APOB遺伝子異常が原因で、両親(ヘテロ接合体)もLDL・apoBが低いことが多い点で区別します。
  • カイロミクロン停滞病(Anderson病): SAR1B遺伝子異常により脂肪吸収障害と脂溶性ビタミン欠乏を示しますが、空腹時のLDL・apoBは低いものの検出される点、有棘赤血球が目立たない点が異なります。
  • 神経有棘赤血球症: 有棘赤血球と神経症状を伴いますが、血清脂質は正常で、舞踏運動などの不随意運動が主体である点が異なります。
  • フリードライヒ失調症・ビタミンE単独欠乏性失調症(AVED): 類似した脊髄小脳失調と腱反射消失を示しますが、血清リポタンパクは正常で、AVEDではα-トコフェロール転送タンパク遺伝子の異常によりビタミンEのみが低値となります。
  • 続発性低脂血症・吸収不良症候群: 嚢胞性線維症、セリアック病、胆汁うっ滞性肝疾患、重度の栄養障害、甲状腺機能亢進症などでも低脂血症とビタミン欠乏を生じますが、apoBの完全欠如はまれです。
  • 網膜色素変性症: 眼底所見は類似しますが、血清脂質と脂溶性ビタミンは正常で、消化器症状や有棘赤血球を伴いません。

無βリポタンパク血症の治療

根本的に病態を改善する治療はなく、治療の柱は①長鎖脂肪の制限による消化器症状の改善と成長の確保、②高用量の脂溶性ビタミン補充による神経・網膜・凝固・骨合併症の予防の2つです。とくにビタミンEの十分な補充は神経障害の進行を抑えるうえで中心的と考えられており、できるだけ早期に開始し、生涯続けることが重要とされます。治療は小児科(代謝・消化器)、神経内科、眼科、栄養士が連携して行い、成長、血中ビタミン濃度、凝固能、肝機能、神経・眼所見を定期的に評価しながら用量を調整します。用量は文献や施設によって異なるため、具体的な処方は専門医の判断に従ってください。

  • 低脂肪食(長鎖脂肪酸の制限): 食事中の長鎖脂肪を制限すると、脂肪便や下痢、腹部症状が軽くなります。一方で過度の制限はエネルギー不足や必須脂肪酸欠乏を招くため、管理栄養士による個別指導が不可欠です。
  • 必須脂肪酸の確保: リノール酸・α-リノレン酸、DHAなどの必須脂肪酸は少量でも確保するよう工夫します。必須脂肪酸欠乏の有無を確認しながら調整します。
  • 中鎖脂肪酸(MCT)の利用: MCTはカイロミクロンを介さず門脈から吸収されるため、エネルギー補給に使われることがあります。ただし肝線維化との関連を指摘する報告もあり、使用の可否と量は慎重に判断されます。
  • 高用量ビタミンE補充: 神経障害と網膜症の予防・進行抑制の中心となる治療で、通常量をはるかに超える体重あたりの高用量が経口で長期投与されます。血中濃度は正常化しにくいため、臨床経過も含めて効果を判断します。
  • ビタミンA補充: 網膜症と夜盲の予防・改善のために補充します。過剰症(肝障害、頭蓋内圧亢進、妊娠時の催奇形性)を避けるため、血中濃度をみながら調整します。
  • ビタミンK補充: PT/INRを指標に補充し、出血傾向を防ぎます。手術や抜歯の前には凝固能の確認が必要です。
  • ビタミンD・カルシウム補充: 25-ヒドロキシビタミンD値と骨代謝マーカーを確認し、くる病・骨粗鬆症を予防します。
  • リハビリテーション・補装具: 運動失調や筋力低下に対しては、理学療法、作業療法、装具、歩行補助具を用いて機能を維持します。側弯症には整形外科的評価が必要です。
  • 眼科的ケア・ロービジョン支援: 網膜症が進んだ場合は、遮光眼鏡、拡大鏡などの視覚補助具や、ロービジョンケアによる生活支援を行います。

無βリポタンパク血症の予後・長期フォロー

予後は診断・治療開始の時期に大きく左右されます。乳幼児期に診断され、食事療法と高用量ビタミン補充を継続した患者では、神経症状や網膜症が出ない、または軽く済み、通常に近い学業・社会生活を送れる例が報告されています。一方、診断が遅れ、長期間ビタミンE欠乏にさらされた場合は、進行性の運動失調や視力障害が残ることが多く、生活の質(QOL)が大きく損なわれます。生命予後についての大規模なデータは乏しいものの、神経障害の進行に伴う合併症や、まれに肝硬変・心筋障害が予後に影響しうるとされています。

長期フォローアップでは、身長・体重などの成長、血中ビタミンA・E・D濃度、PT/INR、肝機能と肝臓の画像(脂肪肝・線維化)、必須脂肪酸の状態、骨密度を定期的に評価します。神経学的診察(腱反射、深部感覚、失調)と眼科診察(眼底、網膜電図、視野)は、少なくとも年1回程度を目安に継続することが望まれます。小児期から成人期への移行では、小児科から内科・神経内科への移行期医療を計画的に進め、治療が中断しないよう支えることが重要です。妊娠を希望する女性では、妊娠前からビタミン用量と栄養状態を専門医と調整します。

無βリポタンパク血症の日常生活の注意点と公的支援(医療費助成)

毎日の食事管理とビタミン内服を自己判断で中断しないことが最も大切です。症状が落ち着いていても、ビタミンE欠乏による神経障害は自覚のないまま進むことがあります。外食や学校給食では脂肪量が多くなりやすいため、管理栄養士と相談して献立の工夫や学校との情報共有を行います。運動失調や夜盲がある場合は、夜間の外出や暗い場所での転倒、運転に注意が必要です。手術・抜歯・予防接種の際には本症であることとビタミンKの状況を医療者に伝えてください。遺伝については、両親が保因者である場合、きょうだいが同じ病気である確率は1/4です。保因者の血清脂質は通常正常なので、家族の検査や将来の妊娠については遺伝カウンセリング(臨床遺伝専門医・認定遺伝カウンセラー)で相談できます。きょうだいに未診断の患者がいないか、脂質検査で確認することも検討されます。

利用できる制度・相談窓口

無βリポタンパク血症は指定難病(告示番号264)に指定されており、診断基準と重症度基準を満たす場合は、難病指定医の診断書(臨床調査個人票)を添えて都道府県・指定都市に申請すると、医療費助成を受けられます。18歳未満(継続の場合は20歳未満まで)の患者は小児慢性特定疾病(先天性代謝異常の脂質代謝異常に含まれる)の医療費助成の対象となりうるため、居住地の自治体に確認してください。神経障害や視覚障害が固定した場合は、身体障害者手帳(肢体不自由・視覚障害)の取得、補装具の給付、障害福祉サービスの利用が可能です。日常生活や就労に支障がある場合は、障害年金の対象となることがあります。40歳未満は介護保険の対象外ですが、障害者総合支援法に基づくサービスは指定難病の患者も利用できます。相談窓口としては、都道府県の難病相談支援センター、保健所の保健師、医療機関の医療ソーシャルワーカー、難病情報センターのウェブサイトなどがあります。

無βリポタンパク血症に伴う心のケア・心理社会的支援

生涯にわたる食事制限と毎日の多量の内服は、子どもにとっても家族にとっても大きな負担です。給食や友人との外食で周囲と違う食事をすることへの疎外感、内服の拒否、思春期の治療アドヒアランス低下は、この疾患で起こりやすい課題です。将来の歩行障害や視力低下への不安、まれな病気で同じ境遇の人に出会いにくい孤立感、遺伝性疾患であることへの親の自責感も心理的ストレスになります。こうした負担が抑うつ、不安障害、適応障害につながることもあります。気分の落ち込み、不眠、意欲低下、登校・出勤の困難が続くときは、主治医、心理士、精神科・児童精神科、学校のスクールカウンセラーに早めに相談してください。病気について年齢に応じた説明を重ね、本人が治療の意味を理解して自分で管理できるよう支えることが、長期的な予後とQOLの両方に役立ちます。

Medi Faceでは、慢性疾患に伴うこころの不調についてのオンライン相談も行っています。お問い合わせはこちら。

無βリポタンパク血症の受診の目安

  • 乳児の脂っぽい大量の便、下痢、体重増加不良が続くときは、小児科を受診してください。
  • ふらつき、つまずきやすさ、暗い所での歩きにくさ、手足のしびれが新たに出たり悪化したりしたときは、早めに主治医に相談してください。
  • 夜に見えにくい、視野が狭くなった、色が見分けにくいなどの見え方の変化に気づいたときは、眼科を受診してください。
  • 鼻血が止まりにくい、あざが増えた、歯ぐきから出血するなどの出血傾向があるときは、速やかに受診してください。
  • 大量の出血、頭部打撲後の頭痛・嘔吐、意識の変化がある場合は、救急受診してください。
  • 嘔吐や下痢でビタミンや食事がとれない状態が数日続くときは、主治医に連絡してください。

無βリポタンパク血症についてのよくある質問

Q. コレステロールが低いのは体に良いことではないのですか?

A. 一般的にはLDLコレステロールが低いことは動脈硬化の面で有利とされます。ただし本症では、脂肪と脂溶性ビタミンを運ぶ仕組みそのものが働かないことが問題です。コレステロールの値ではなく、ビタミン欠乏による神経・眼の障害が治療の対象になります。

Q. ビタミンEはサプリメントで足りますか?

A. 本症では通常のサプリメントの量をはるかに超える高用量が必要とされます。製剤や用量の選択には専門的な判断が要るため、主治医の処方に従い、自己判断で変更・中止しないでください。

Q. 子どもに遺伝しますか?

A. 常染色体潜性遺伝のため、患者本人の子どもは通常保因者となり、配偶者も保因者でない限り発症しないと考えられます。家族計画については遺伝カウンセリングで具体的に相談できます。

Q. すでに出ている神経症状は治りますか?

A. 十分なビタミン補充で進行が止まる、または一部改善したとする報告はあります。ただし、長期間続いた障害が完全に回復するとは限りません。だからこそ早期診断と治療の継続が重要です。

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最終更新: 2026-10-18。発行: 株式会社Medi Face。本ページは、MSDマニュアル プロフェッショナル版、難病情報センター、各学会の診断基準・診療ガイドラインなどの公的・専門的情報を参照して作成した一般的な医学情報であり、診断・治療の代替ではありません。個別の診療は主治医・専門医にご相談ください。参考: MSDマニュアル プロフェッショナル版、難病情報センター。記載内容に誤りや古い情報を見つけた場合はお問い合わせからお知らせください。