血栓性血小板減少性紫斑病
Thrombotic Thrombocytopenic Purpura (TTP)
血栓性血小板減少性紫斑病(Thrombotic Thrombocytopenic Purpura (TTP))|血栓性血小板減少性紫斑病(TTP)は、全身の細い血管に血小板の血栓(微小血栓)が多発し、血小板減少、赤血球の破壊(溶血性貧血)、脳や腎臓などの臓器障害を急激に引き起こす重篤な血液疾患です。原因は、血液を固める蛋白質フォン・ヴィレブランド因子(VWF)を切断する酵素ADAMTS13の著しい低下です。治療しなければ多くが短期間で亡くなる一方、早期に診断して血漿交換などの治療を始めれば多くの患者が救命できるため、迅速な診断と専門施設での治療が非常に重要です。
血栓性血小板減少性紫斑病の要点
血栓性血小板減少性紫斑病(TTP)は、ADAMTS13の著しい低下により全身の細い血管に血小板血栓ができ、血小板減少や溶血性貧血、脳・腎などの臓器障害を起こす重篤な血液疾患です。急激に発症し、紫斑や意識障害、発熱などがみられ、血漿交換など早期の治療が重要で、国の指定難病です。
| 別名・略称 | TTP、Moschcowitz病、Upshaw-Schulman症候群(先天性TTP) |
|---|---|
| 分野 | 血液疾患 |
| 病型 | 後天性(免疫性)TTPが大部分、先天性TTP(Upshaw-Schulman症候群)もある |
| 遺伝形式 | 先天性型はADAMTS13遺伝子の両アレル変異(常染色体潜性)、後天性型は自己抗体による |
| 主な症状 | 紫斑などの出血症状、溶血性貧血、腎障害、発熱、精神神経症状 |
| 主な検査 | 血小板数、溶血所見、ADAMTS13活性(著しい低下)とインヒビター測定 |
| 主な治療 | 血漿交換療法など(早期開始が重要) |
| 受診する主な診療科 | 血液内科 |
血栓性血小板減少性紫斑病とは
TTPは血栓性微小血管症(thrombotic microangiopathy:TMA)の代表的な疾患です。TMAは、①血小板減少、②赤血球が血管内で物理的に壊される微小血管症性溶血性貧血(MAHA)、③微小血栓による臓器障害の3つを特徴とする病態の総称です。TTPはその中でも、ADAMTS13活性が著しく低下(一般に10%未満)していることで定義されます。ADAMTS13が働かないと、血管内皮から分泌された「超高分子量VWF多量体」が切断されずに残ります。これが血流の速い細い血管で血小板を過剰に集め、血小板主体の血栓を作ります。なお、TTPの血小板減少は「骨髄で血小板が作られなくなる」ことや「自己抗体が血小板を直接攻撃する」ことによるものではありません。主に微小血栓の形成によって血小板が消費されることで生じます。血小板そのものに対する自己抗体で血小板が壊される病気は、特発性血小板減少性紫斑病(ITP)という別の疾患です。
TTPは原因によって大きく2つに分類されます。1つは後天性(免疫性)TTPで、ADAMTS13に対する自己抗体(主に活性を抑える中和抗体=インヒビター)によって酵素が働かなくなるものです。TTP全体の大部分を占めます。特に誘因のない特発性のほか、膠原病(全身性エリテマトーデスなど)、薬剤(チクロピジンなど)、妊娠、感染症、悪性腫瘍、造血幹細胞移植などに関連して起こる二次性の場合もあります。もう1つは先天性TTPで、ADAMTS13遺伝子の両方の対立遺伝子に変異があり、生まれつき酵素活性が低いものです。日本ではUpshaw-Schulman症候群(USS)とも呼ばれます。歴史的には、1924年にMoschcowitzが初めて報告し、その後、血小板減少・溶血性貧血・腎障害・発熱・精神神経症状の「古典的五徴」が知られるようになりました。1990年代後半にVWF切断酵素の欠乏が原因であることが明らかになり、2001年にその酵素がADAMTS13として同定されました。日本ではこの分野の研究が国際的にも先駆的に行われてきました。現在は、ADAMTS13活性とインヒビターの測定に基づく診断が標準となっています。
血栓性血小板減少性紫斑病の疫学・患者数
TTPはまれな疾患で、後天性TTPの年間発症は人口100万人あたり数人程度と推定されています。日本でも国内の登録研究により多数の症例が集積されていますが、正確な有病率は明確ではありません。後天性TTPは成人に多く、発症の中心は30〜50歳代とされます。高齢者や小児にもみられ、女性にやや多い傾向が報告されています。妊娠・出産をきっかけに発症・再発することもあります。先天性TTPは非常にまれで、国内で確認されている患者は限られています。発症時期は幅広く、新生児期に重い黄疸や血小板減少として見つかる例もあれば、小児期に感染症などを機に繰り返す例、成人になって初めての妊娠で診断される例もあります。近年はADAMTS13検査が普及し保険診療で測定できるようになったため、以前は他の病気と考えられていた症例がTTPと診断されるようになっています。
血栓性血小板減少性紫斑病の原因・病態生理
TTPの本質は、VWF切断酵素ADAMTS13の機能不全です。VWFは主に血管内皮細胞で作られる巨大な糖蛋白質で、血管が傷ついたときに血小板を傷口に呼び寄せ、止血の足場になります。内皮から分泌された直後のVWFは非常に大きな多量体(超高分子量VWF多量体)で、血小板を結合する力が強いため、通常はADAMTS13が速やかに適切な大きさに切断します。後天性TTPでは、ADAMTS13に対するIgG型を主体とした自己抗体が作られます。この自己抗体は酵素活性を直接抑えるか、酵素の血中からの除去を早めることで、活性を著しく低下させます。自己抗体ができる理由は完全には分かっていませんが、特定のHLA型との関連や、感染・妊娠・薬剤などの免疫学的な誘因が関与すると考えられています。先天性TTPは、第9染色体にあるADAMTS13遺伝子の変異による常染色体潜性(劣性)遺伝の疾患です。両親から1つずつ変異を受け継いだ場合に発症します。
ADAMTS13活性が低下すると、超高分子量VWF多量体が血中に残ります。細動脈や毛細血管など血流が速く強い「ずり応力」がかかる部位では、VWFが引き伸ばされて血小板の受容体(GPIb)と結合しやすくなります。その結果、血小板が次々に集まって、血小板とVWFに富む微小血栓が全身に多発します。血小板はこの血栓形成で消費されるため、著しく減少します。また、赤血球は血栓で狭くなった血管を通るときに物理的に引き裂かれ、破砕赤血球となって溶血が起こります。微小血栓は脳・心臓・腎臓・消化管などの臓器の血流を妨げ、虚血による臓器障害を引き起こします。凝固因子が主体となるDICとは異なり、凝固系(PT・APTT・フィブリノゲン)は通常ほぼ正常に保たれます。ADAMTS13活性の低下だけで必ず発症するわけではありません。感染症、妊娠、手術、炎症など、VWFの分泌を増やしたり内皮を活性化させたりする「第二の誘因」が加わることで急性発作が起こると考えられています。
血栓性血小板減少性紫斑病の症状
- 点状出血・紫斑: 血小板減少により皮膚に赤い点状の出血やあざ(紫斑)ができます。歯ぐきや鼻からの出血、月経過多がみられることもありますが、大出血は比較的まれです。
- 貧血症状(倦怠感・息切れ・動悸): 溶血による貧血で、だるさ、息切れ、動悸、顔色不良が現れます。数日から数週間で急速に進むことがあります。
- 黄疸: 赤血球の破壊で間接ビリルビンが増え、皮膚や白目が黄色くなります。
- 褐色尿(暗色尿): 血管内溶血が強いと、尿がコーラのような濃い色になることがあります。
- 精神神経症状: 頭痛、錯乱、性格変化、言葉が出にくい、手足の麻痺、視覚異常、けいれん、意識障害など多彩な症状が現れます。数分から数時間で症状が変動(出たり消えたり)することが特徴的です。
- 発熱: 古典的五徴の1つですが、高熱は必ずしも多くありません。高熱が目立つときは感染症の合併にも注意が必要です。
- 腎障害: 蛋白尿や血尿、軽度から中等度のクレアチニン上昇がみられます。高度の急性腎障害はTTPより溶血性尿毒症症候群(HUS)を示唆します。
- 腹痛・消化器症状: 腸管や膵臓の微小循環障害により、腹痛、吐き気、嘔吐、下痢が生じることがあり、初発症状となる場合もあります。
- 胸痛・心症状: 心臓の微小血栓によって胸痛、不整脈、心不全、心筋梗塞を起こすことがあります。トロポニン上昇は重症度や予後と関連すると報告されています。
- 新生児期の重症黄疸(先天性TTP): 先天性TTPでは、出生直後の高度な黄疸や血小板減少で交換輸血が必要になることがあり、診断の手がかりとなります。
血栓性血小板減少性紫斑病の経過と合併症
後天性TTPは多くが急性に発症し、治療しなければ微小血栓による脳・心臓の障害で短期間に死亡する危険が高い疾患です。かつては致死率が約90%とされていましたが、血漿交換療法の導入で生存率は大きく改善しました。治療を始めると、多くは数日から2週間程度で血小板数が回復し、LDHが下がっていきます。しかし、治療に反応しにくい難治例や、いったん改善した後に再び悪化する増悪例もあります。寛解した後も自己抗体が再び作られて再発することがあり、再発は数年後に起こることもあります。寛解期でもADAMTS13活性が低いままの患者は再発リスクが高いとされます。先天性TTPは、感染症や妊娠などの誘因で発作を繰り返す慢性再発型と、発作がまれな型があり、経過は人によって大きく異なります。妊娠中は生理的にVWFが増え、ADAMTS13活性が下がるため、発症・増悪の大きなきっかけになります。
急性期の重い合併症として、脳梗塞・一過性脳虚血発作・けいれん・昏睡などの神経障害、心筋梗塞・致死的不整脈・突然死などの心臓障害、急性腎障害、腸管虚血、膵炎があります。治療に関連する合併症として、血漿交換用のカテーテル感染や血栓、血漿製剤によるアレルギー反応・輸血関連急性肺障害、ステロイドによる感染症・高血糖・骨粗鬆症などにも注意が必要です。長期的には、寛解後も認知機能の低下(集中力・記憶力の障害)、抑うつ、高血圧、脳卒中のリスク上昇が報告されています。先天性TTPでは、反復する微小血栓によって慢性腎臓病や脳梗塞などの臓器障害が徐々に進むことがあります。妊娠では胎盤の血流障害による流産・死産、胎児発育不全、妊娠高血圧症候群のリスクがあります。
血栓性血小板減少性紫斑病の診断・診断基準
TTPは「疑ったらすぐに治療を始める」ことが求められる緊急疾患です。原因の分からない血小板減少と溶血性貧血が同時にみられた場合は、まず血液塗抹標本で破砕赤血球を確認し、溶血の指標、凝固検査、腎機能などから血栓性微小血管症を疑います。確定診断にはADAMTS13活性の測定が欠かせませんが、結果が出るまで時間がかかることがあります。そのため、臨床的にTTPの可能性が高いと判断した時点で、ADAMTS13検査用の採血(血漿交換や輸血の前)を行い、結果を待たずに治療を始めるのが一般的です。日本のTTP診療ガイド(厚生労働省研究班・日本血液学会関連)では、ADAMTS13活性10%未満でTTPと診断します。インヒビター(抗ADAMTS13抗体)が陽性であれば後天性TTP、陰性で先天性が疑われる場合はADAMTS13遺伝子検査などで先天性TTPを確定します。あわせて、膠原病、薬剤、妊娠、悪性腫瘍、感染症などの背景疾患を調べます。
- 血算・末梢血塗抹標本: 血小板減少(多くは3万/μL以下と高度)、正球性貧血、網赤血球の増加を認めます。塗抹標本で破砕赤血球(シストサイト)が見つかることがMAHAの重要な根拠です。
- 溶血マーカー: LDH高値、間接ビリルビン高値、ハプトグロビン低値がみられます。LDHは臓器の虚血も反映し、治療効果の目安にも使われます。
- 直接クームス試験・凝固検査: 直接クームス試験は通常陰性で、自己免疫性溶血性貧血との鑑別に役立ちます。PT・APTT・フィブリノゲンがほぼ正常であることはDICとの鑑別点です。
- ADAMTS13活性: 10%未満への著減がTTP診断の決め手です。治療開始前に採血することが重要で、日本では保険診療で測定できます。
- ADAMTS13インヒビター(抗ADAMTS13抗体): 陽性であれば後天性(免疫性)TTPと診断できます。抗体価の高さは治療反応や再発リスクの参考になるとされます。
- ADAMTS13遺伝子解析・家族検査: インヒビター陰性でADAMTS13活性が持続的に低い場合に行い、両方の対立遺伝子の変異を確認して先天性TTPを確定します。両親の活性測定が参考になることもあります。
- PLASMICスコアなどの臨床予測スコア: 血小板数、溶血所見、悪性腫瘍・移植歴の有無、MCV、PT-INR、クレアチニンからADAMTS13著減の可能性を推定する指標で、検査結果が出る前の初期判断を補助します。
- 臓器障害の評価: 腎機能・尿検査、心電図・トロポニン、頭部CT・MRIで臓器障害の程度を評価します。トロポニン上昇や意識障害は重症のサインとされます。
- 背景疾患の検索: 抗核抗体などの自己抗体、HIVなどの感染症、妊娠反応、服薬歴、悪性腫瘍の検索を行い、二次性TTPや他のTMAを除外します。骨髄検査は通常の診断には必須ではありません。
血栓性血小板減少性紫斑病と鑑別すべき疾患
- 溶血性尿毒症症候群(STEC-HUS): 腸管出血性大腸菌感染後の血便を伴う下痢に続いて発症し、高度の急性腎障害が目立ちます。ADAMTS13活性は著減しません。
- 非典型溶血性尿毒症症候群(aHUS): 補体制御の異常によるTMAで腎障害が強く、ADAMTS13活性は10%以上に保たれていることが鑑別の基本です。
- 播種性血管内凝固(DIC): 敗血症や悪性腫瘍などを背景に、PT延長、フィブリノゲン低下、FDP・Dダイマーの著増など凝固異常が前面に出ます。
- 特発性血小板減少性紫斑病(ITP)・エバンス症候群: ITPでは溶血や破砕赤血球を伴いません。エバンス症候群では溶血を伴いますが、直接クームス試験が陽性です。
- HELLP症候群・妊娠関連TMA: 妊娠後期から産後に溶血、肝酵素上昇、血小板減少を示し、通常は分娩後に改善します。ADAMTS13活性は著減しないことが多く、妊娠中のTTPとの鑑別に重要です。
- 薬剤性・移植後・膠原病関連TMA、ビタミンB12欠乏症: 原因薬剤、造血幹細胞移植、全身性エリテマトーデスや抗リン脂質抗体症候群などの背景を確認します。高度のビタミンB12欠乏は破砕赤血球を伴う偽性TMAを呈し、大球性貧血や網赤血球の低値が手がかりになります。
血栓性血小板減少性紫斑病の治療
後天性TTPの急性期治療は、①血漿交換療法で自己抗体と超高分子量VWFを取り除き、ADAMTS13を補充すること、②免疫抑制療法で自己抗体の産生を抑えること、③VWFと血小板の結合を阻害して微小血栓の形成を直ちに止めること、の3つを柱として行います。TTPを強く疑った時点で、集中治療と血漿交換ができる専門施設へ速やかに搬送し、治療を開始することが救命の鍵です。血小板数が低くても、出血が重篤でない限り血小板輸血は原則として避けます。血栓の材料を補給して症状を悪化させるおそれがあると考えられているためです。カテーテル挿入などの処置で必要な場合は慎重に判断されます。先天性TTPでは自己抗体がないため、不足しているADAMTS13を補充する治療が中心となります。治療薬の選択や組み合わせ、治療期間は、重症度や合併症、妊娠の有無などで変わるため、主治医・血液専門医と十分に相談して決定します。
- 血漿交換療法(PEX): 患者の血漿を取り除き、新鮮凍結血漿(FFP)と置き換える治療で、後天性TTP治療の中心です。原則として毎日行い、血小板数が回復して安定するまで続けます。
- 副腎皮質ステロイド: 自己抗体の産生を抑える目的で、血漿交換と併用して使われます。プレドニゾロンの内服やメチルプレドニゾロンのパルス療法などが選択されます。
- リツキシマブ: 抗体を作るB細胞を減らす抗CD20抗体です。日本では後天性TTPに対して保険適用があり、難治例や再発例に加え、早期からの併用で再発を減らす効果が期待されています。
- カプラシズマブ: VWFと血小板の結合を阻害するナノボディ製剤で、日本では後天性TTPに承認されています。血漿交換・免疫抑制療法と併用することで、血小板数の回復を早め、増悪や血栓による臓器障害を減らすことが示されています。出血傾向に注意が必要です。
- 新鮮凍結血漿(FFP)の定期輸注(先天性TTP): 先天性TTPではADAMTS13を補うためにFFPを輸注します。発作時だけでなく、再発予防として定期的に輸注することもあります。
- 遺伝子組換えADAMTS13製剤: 先天性TTPに対してADAMTS13を直接補充する製剤が開発され、近年承認されて使われ始めています。適応や使い方は専門医に確認してください。
- 難治例・再発例への追加治療: シクロスポリンなどの免疫抑制薬が検討されることがあります。脾臓摘出術はかつて用いられましたが、現在は一部の難治例に限られます。
- 支持療法・背景疾患の治療: 赤血球輸血、葉酸補充、けいれんや心臓合併症の管理を行います。二次性TTPでは、原因薬剤の中止や膠原病・妊娠などの背景への対応を行います。
- 寛解期のADAMTS13モニタリングと先制治療: 寛解後も定期的にADAMTS13活性を測定し、著しい低下が続く場合は、再発前にリツキシマブなどによる先制治療が検討されることがあります。
血栓性血小板減少性紫斑病の予後・長期フォロー
後天性TTPは、適切な治療を早く受ければ多くの患者が寛解に至ります。急性期の死亡率は、血漿交換の時代で10〜20%程度と報告されてきました。新しい薬剤によってさらなる改善が期待されていますが、発症から数日以内の心臓・脳の合併症による死亡は今も重要な課題です。高齢、意識障害、トロポニン上昇、治療開始の遅れは予後不良因子とされています。寛解後に再発する人も少なくなく、寛解期にADAMTS13活性が低いままであることが再発の危険因子とされます。生活の質(QOL)については、多くの人が社会生活に復帰します。一方で、疲れやすさ、集中力・記憶力の低下、抑うつ、不安が長く続く人もいることが知られています。先天性TTPでは、適切な補充療法によって通常の生活を送れる場合が多いものの、長期的な腎障害や脳卒中を予防することが目標となります。
寛解後も、血液専門医による長期的な通院が必要です。血小板数・LDHに加えて、ADAMTS13活性(必要に応じてインヒビター)を定期的に測定し、再発の兆候を早く見つけます。再発は治療終了から年単位で起こることがあるため、症状がなくても自己判断で通院をやめないことが大切です。長期の合併症として、高血圧、腎機能低下、脳卒中、心血管疾患、認知機能の変化、抑うつにも注意し、血圧管理や生活習慣病の予防に取り組みます。ステロイドを長く使った場合は、骨密度や血糖の評価も行います。妊娠を希望する場合は、妊娠前から血液内科と産科で連携して計画を立てることが推奨されます。妊娠中のADAMTS13モニタリングや予防的治療(先天性TTPでの血漿輸注など)を検討します。
血栓性血小板減少性紫斑病の日常生活の注意点と公的支援(医療費助成)
寛解期の日常生活は、多くの場合、大きな制限なく送ることができます。ただし、再発の初期症状(あざが増える、点状出血、尿の色が濃い、強いだるさ、頭痛やしびれ、言葉の出にくさなど)を本人と家族が知っておき、異常があればすぐに受診することが最も重要です。感染症は発作の誘因となるため、手洗いや予防接種(主治医と相談のうえ)などの基本的な感染対策を心がけます。リツキシマブ投与後はワクチンの効果が弱まったり、感染しやすくなったりする時期があるため、接種のタイミングは主治医に確認してください。チクロピジンやクロピドグレルなど一部の薬剤はTTPとの関連が報告されています。他の医療機関を受診する際や新しい薬を始める際は、TTPの病歴を必ず伝えましょう。お薬手帳や患者カードを携帯すると安心です。妊娠は発症・再発の大きな誘因となるため、計画的な妊娠と専門医によるフォローが望まれます。先天性TTPは常染色体潜性遺伝の疾患で、患者の兄弟姉妹は4分の1の確率で発症する可能性があります。家族の検査や将来の妊娠については、遺伝カウンセリングを受けることで、正確な情報に基づいて考えることができます。後天性TTPは通常遺伝する病気ではありません。
利用できる制度・相談窓口
血栓性血小板減少性紫斑病は国の指定難病で、診断基準と重症度基準を満たす場合、医療費助成(特定医療費)を受けられます。申請には難病指定医が作成した臨床調査個人票が必要で、お住まいの都道府県・指定都市の保健所などの窓口で手続きします。重症度基準に当てはまらない場合でも、医療費が一定額を超える「軽症高額該当」として助成の対象となることがあります。18歳未満の患者(先天性TTPなど)は、小児慢性特定疾病医療費助成制度の対象となる場合があります。急性期の入院や血漿交換で高額な医療費がかかったときは、医療保険の高額療養費制度や限度額適用認定証も利用できます。脳梗塞などの後遺症で日常生活や仕事に支障が残った場合は、障害の程度に応じて身体障害者手帳や障害年金の対象となることがあります。脳血管疾患による後遺症は、40〜64歳でも介護保険の特定疾病に該当する場合があります。相談窓口として、各都道府県の難病相談支援センター、保健所の保健師、医療機関の医療ソーシャルワーカー、ハローワークの難病患者就職サポーターなどがあり、制度の利用や仕事との両立について相談できます。
血栓性血小板減少性紫斑病に伴う心のケア・心理社会的支援
TTPは、元気だった人がある日突然、生命にかかわる状態で集中治療を受けることになる病気です。そのため、回復後も「また急に再発するのではないか」という強い不安や、救急搬送・集中治療の体験がよみがえる心的外傷後ストレス症状に悩む人が少なくありません。後天性TTPでは寛解後に抑うつの頻度が高いことや、集中力・記憶力の低下を感じる人がいることが報告されています。これらは気持ちの弱さではなく、病気そのものや治療の影響が関係している可能性があります。外見からは分かりにくい疲れやすさや認知面の不調は、職場や学校で理解されにくく、孤立感や適応障害につながることがあります。妊娠が発症の誘因となりうることから、妊娠・出産に関する悩みや、先天性TTPでは家族への遺伝の不安や定期輸注による生活の制約といった特有の負担も生じます。気分の落ち込み、不眠、不安が2週間以上続く場合や、日常生活に支障を感じる場合は、我慢せず主治医に伝えてください。必要に応じて精神科・心療内科、臨床心理士(公認心理師)、医療ソーシャルワーカーなどの支援を受けることが大切です。患者会や同じ病気の人との交流も心の支えになります。
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血栓性血小板減少性紫斑病の受診の目安
- あざ(紫斑)や皮膚の赤い点状出血が急に増えた、歯ぐきや鼻からの出血が止まりにくいときは、早めに医療機関を受診してください。
- 強いだるさ・息切れ・動悸とともに、白目や皮膚が黄色い、尿がコーラ色になったときは、当日中の受診が必要です。
- 突然の激しい頭痛、意識がもうろうとする、言葉が出にくい、手足の麻痺やしびれ、けいれんが起きたときは、ためらわず救急車を呼んでください。
- 胸の痛みや圧迫感、強い動悸、失神がある場合は、心臓の合併症の可能性があるため救急受診してください。
- TTPの既往がある人が発熱・感染症・妊娠などをきっかけに体調の変化を感じたときは、主治医に連絡し、血小板数などの検査を受けてください。
血栓性血小板減少性紫斑病についてのよくある質問
Q. ITP(特発性血小板減少性紫斑病)とは違う病気ですか?
A. 名前は似ていますが、まったく別の病気です。ITPは血小板に対する自己抗体によって血小板が壊される病気で、主な問題は出血です。TTPはADAMTS13の低下によって全身に微小血栓ができる病気で、溶血性貧血や脳・心臓などの臓器障害を伴い、治療法も大きく異なります。
Q. 血小板が少ないのに、なぜ血小板輸血をしないのですか?
A. TTPでは血小板が血栓の材料として消費されているため、輸血した血小板がさらに血栓を作り、症状を悪化させるおそれがあると考えられています。そのため、命にかかわる出血など特別な場合を除き、血小板輸血は原則として控えます。代わりに、血漿交換などで原因そのものを治療します。
Q. 一度治っても再発しますか?
A. 後天性TTPは寛解後に再発することがあり、数年たってから再発する場合もあります。寛解期にADAMTS13活性が低いままの場合は再発しやすいとされるため、定期的な検査で早めに見つけ、必要に応じて予防的な治療が検討されます。症状がなくても通院を続けることが大切です。
Q. TTPを経験した後に妊娠・出産はできますか?
A. 妊娠はTTPの発症や再発のきっかけになるため、注意が必要ですが、専門医による計画的な管理のもとで出産している方もいます。妊娠を考えた段階で血液内科と産科に相談し、ADAMTS13活性の確認や妊娠中の予防策(先天性TTPでの定期的な血漿輸注など)について話し合いましょう。
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この記事について
最終更新: 2026-10-18。発行: 株式会社Medi Face。本ページは、MSDマニュアル プロフェッショナル版、難病情報センター、各学会の診断基準・診療ガイドラインなどの公的・専門的情報を参照して作成した一般的な医学情報であり、診断・治療の代替ではありません。個別の診療は主治医・専門医にご相談ください。参考: MSDマニュアル プロフェッショナル版、難病情報センター。記載内容に誤りや古い情報を見つけた場合はお問い合わせからお知らせください。