家族性高コレステロール血症(ホモ接合体)

Familial Hypercholesterolemia Homozygous Type

家族性高コレステロール血症(ホモ接合体)(Familial Hypercholesterolemia Homozygous Type)|家族性高コレステロール血症(ホモ接合体)は、まれな遺伝性脂質異常症です。LDLコレステロール(いわゆる悪玉コレステロール)を血液から取り除く仕組みに、両親の双方から受け継いだ遺伝子変異が重なって起こります。生まれた時から血清LDLコレステロールが著しく高くなります。そのため、小児期から皮膚の黄色腫が現れ、冠動脈疾患や大動脈弁狭窄症といった重い動脈硬化性疾患が進みます。生命予後を大きく左右するのは、早期の診断と、生涯にわたる治療です。治療では、薬物療法やLDLアフェレシスなどを組み合わせます。診断や治療は、脂質異常症に詳しい専門医のもとで計画的に進めることが大切です。

家族性高コレステロール血症(ホモ接合体)の要点

家族性高コレステロール血症(ホモ接合体)は、両親から受け継いだ遺伝子変異のためLDLコレステロールを処理できず、生まれつき血中濃度が著しく高くなる遺伝性疾患です。小児期から黄色腫や冠動脈疾患、大動脈弁狭窄症が進み、指定難病(告示番号79)です。

別名・略称ホモ接合体家族性高コレステロール血症、HoFH、ホモ接合体FH、FHホモ接合体、家族性高コレステロール血症ホモ接合体、Homozygous familial hypercholesterolemia
分野代謝疾患
遺伝形式両親から変異を受け継ぐ(LDL受容体関連遺伝子の変異)
好発年齢生下時から高LDL-C、小児期に症状が出現
主な症状皮膚黄色腫、冠動脈疾患、大動脈弁狭窄症
主な検査血清LDLコレステロール測定、遺伝子検査、黄色腫の診察
主な治療食事療法、薬物療法、LDLアフェレシス
受診する主な診療科内分泌・代謝内科、循環器内科、小児科

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家族性高コレステロール血症(ホモ接合体)とは

家族性高コレステロール血症(familial hypercholesterolemia:FH)は、肝臓のLDL受容体を中心とするLDL代謝経路の遺伝的異常により、血中LDLコレステロール(LDL-C)が生まれつき高くなる疾患です。原因遺伝子の変異を片方の親からだけ受け継いだ状態をヘテロ接合体、両親の双方から受け継いだ状態をホモ接合体(HoFH)と呼びます。ホモ接合体では、LDLを処理する機能がほとんど、あるいは大きく失われています。そのため、未治療時のLDL-Cはヘテロ接合体(おおむね200 mg/dL前後以上)よりはるかに高く、数百mg/dLから1,000 mg/dLに達することもあります。厳密には、同じ遺伝子に同一の変異を2つ持つ「真のホモ接合体」、異なる変異を2つ持つ「複合ヘテロ接合体」、異なる遺伝子に1つずつ変異を持つ「ダブルヘテロ接合体」があります。臨床的には、これらをまとめてホモ接合体相当として扱うのが一般的です。日本では指定難病(告示番号79)に指定されています。

FHの概念は20世紀前半に、黄色腫と若年性心筋梗塞が家族内に集まる疾患として報告されました。1970年代にはブラウンとゴールドスタインがLDL受容体経路を解明し、ホモ接合体患者の細胞でLDL受容体活性が欠損していることを示しました。この業績はコレステロール代謝の理解と、後のスタチン開発につながっています。病型は、残っているLDL受容体の活性によって分けられます。活性がほぼない受容体欠損型(null型)は、活性が一部残る受容体欠陥型(defective型)より重症で、治療への反応も乏しい傾向があります。LDL受容体アダプタータンパク(LDLRAP1)の異常による常染色体劣性高コレステロール血症(ARH)も、臨床像が似ているため類縁病態として扱われます。

家族性高コレステロール血症(ホモ接合体)の疫学・患者数

FHヘテロ接合体は一般人口のおよそ200〜500人に1人と推定され、最も頻度の高い遺伝性疾患の一つです。日本でも数百人に1人程度とされています。ホモ接合体はヘテロ接合体同士の両親から生まれる確率に基づいて、数十万人に1人程度の頻度と推計されています。国内の患者数は数百人規模と考えられますが、診断されていない例も含めて正確な数は分かっていません。遺伝性疾患のため発症は出生時からで、男女差はありません。皮膚黄色腫は幼児期から学童期に現れることが多く、未治療では10歳代以前に冠動脈疾患を発症する例も報告されています。遺伝的背景により残存する受容体機能が異なるため、重症度には大きな幅があります。一部の地域や集団では、創始者効果によって頻度が高いことも知られています。

家族性高コレステロール血症(ホモ接合体)の原因・病態生理

主な原因遺伝子は、LDL受容体遺伝子(LDLR)、アポリポタンパクB遺伝子(APOB)、PCSK9遺伝子(機能獲得型変異)の3つです。最も多いのはLDLRの変異です。FHは基本的に常染色体(共)優性遺伝の形式をとり、遺伝子量効果がみられます。つまり、変異を1つ持つとヘテロ接合体、2つ持つとより重いホモ接合体になります。両親がともにヘテロ接合体の場合、子どもがホモ接合体となる確率は1/4、ヘテロ接合体となる確率は1/2です。これとは別に、LDLRAP1変異による常染色体劣性高コレステロール血症(ARH)があり、この場合は両親のLDL-Cがほぼ正常であることがあります。

肝細胞の表面にあるLDL受容体は、LDL粒子のアポB-100と結合します。結合したLDLは細胞内に取り込まれ、コレステロールとして分解・利用されます。受容体はその後、再び細胞表面に戻って働きます。PCSK9はLDL受容体の分解を促すタンパクで、機能獲得型変異では受容体が減少します。APOB変異ではLDL粒子が受容体に結合しにくくなり、LDLRAP1異常では受容体による取り込みが障害されます。いずれの場合も、LDLが血中から取り除かれにくくなります。ホモ接合体ではこの除去が極端に低下し、LDLが血中に長く留まります。その結果、LDLは動脈壁に入り込んで酸化などの修飾を受け、マクロファージに取り込まれて泡沫細胞となります。こうして粥状動脈硬化(アテローム)が胎児期・乳幼児期から始まります。病変は冠動脈の入口部や大動脈基部、大動脈弁に生じやすく、弁上部狭窄や冠動脈入口部狭窄が特徴的です。皮膚や腱にもコレステロールが沈着し、黄色腫を作ります。

家族性高コレステロール血症(ホモ接合体)の症状

  • 皮膚黄色腫: 幼児期から、手指の間(指間部)、肘、膝、臀部などに黄色〜橙色の扁平または結節状の盛り上がりが現れます。ホモ接合体を疑う重要な手がかりとなり、親が最初に気づく症状のことも多いです。
  • 腱黄色腫・アキレス腱肥厚: アキレス腱や手の伸筋腱などにコレステロールが沈着し、腱が太く硬くなります。アキレス腱の痛みや腱炎を繰り返すことがあります。
  • 眼瞼黄色腫: まぶたの内側を中心に黄色い平らな隆起ができます。ほかの脂質異常症でもみられるため、単独では診断の決め手になりません。
  • 角膜輪: 黒目(角膜)のふちに白〜灰色の輪がみられます。若年でみられる場合は高度の高コレステロール血症を示唆します。
  • 狭心症(胸痛・胸部圧迫感): 運動時などに胸が締めつけられる、圧迫されるといった症状が出ます。小児では症状をうまく訴えられず、発見が遅れることがあります。
  • 急性心筋梗塞: 冠動脈が詰まると強い胸痛、冷や汗、嘔吐などが起こり、命に関わります。未治療では10〜20歳代での発症も報告されています。
  • 大動脈弁狭窄・弁上狭窄による症状: 大動脈弁や弁上部の狭窄が進むと、労作時の息切れ、失神、胸痛が出ます。心雑音で見つかることもあります。
  • 息切れ・易疲労感: 冠動脈疾患や弁膜症による心機能低下の表れであることがあります。
  • 脳血管・頸動脈病変による症状: 頸動脈などの動脈硬化が進むと、一過性脳虚血発作や脳梗塞を起こす可能性があります。
  • 末梢動脈疾患による症状: 下肢の動脈が狭くなると、歩くと足が痛み、休むと治まる間欠性跛行が現れることがあります。
  • 関節痛・腱鞘炎様症状: FHでは、移動性の関節痛やアキレス腱炎が報告されています。小児期の原因不明の関節症状から診断に至ることもあります。
  • 突然死: 冠動脈入口部の狭窄や重度の大動脈弁狭窄があると、前ぶれなく突然死に至る危険があります。

家族性高コレステロール血症(ホモ接合体)の経過と合併症

ホモ接合体では、生まれた時からLDL-Cが高く、動脈硬化は乳幼児期から進行します。一般に、生涯にさらされたLDL-Cの総量(累積LDL-C負荷)が冠動脈疾患の発症時期を決めると考えられています。そのため、ホモ接合体では一般の人より数十年早く冠動脈疾患が起こります。かつての未治療例では、10〜20歳代での心筋梗塞や突然死が多く、30歳まで生きることが難しいとされていました。経過は、残存する受容体活性、診断と治療開始の時期、LDLアフェレシスの導入の有無、治療目標の達成度によって大きく変わります。受容体欠損型(null型)は進行が早く、欠陥型は比較的緩やかな傾向があります。早期からLDLアフェレシスや新しい薬剤による強力な治療を行うと、心血管イベントの発症を遅らせ、黄色腫を小さくできることが示されています。

主な合併症は、冠動脈疾患(狭心症、心筋梗塞、冠動脈入口部狭窄)と、大動脈弁狭窄症・大動脈弁上狭窄です。弁や大動脈基部の病変は、LDL-Cを十分に下げた後も進行し続けることがあり、弁置換術や大動脈基部の手術が必要になる場合があります。このほか、頸動脈狭窄、脳梗塞、腹部大動脈や下肢動脈の病変、心不全、不整脈もみられます。治療に伴う合併症にも注意が必要です。具体的には、アフェレシスのためのバスキュラーアクセス(血管の通り道)のトラブル、鉄欠乏性貧血、薬剤による肝機能障害や脂肪肝などがあります。

家族性高コレステロール血症(ホモ接合体)の診断・診断基準

診断は、著しい高LDL-C血症、小児期からの皮膚黄色腫・腱黄色腫、両親がともにFHヘテロ接合体(または高LDL-C血症)であることを組み合わせて行います。日本動脈硬化学会のガイドラインや指定難病の診断基準では、未治療時のLDL-Cの目安、黄色腫の有無、家族歴に加え、遺伝子検査やLDL受容体活性の測定が判断材料とされています。ただし、具体的な数値の基準は改訂されることがあるため、最新の基準は専門医や公的資料で確認してください。小児では、学校健診や乳幼児期の黄色腫、家族の心筋梗塞をきっかけに見つかることが多いです。一方、成人のヘテロ接合体患者が見つかったことから、子どもや兄弟の検査(カスケードスクリーニング)につながることもあります。診断がついたら直ちに全身の動脈硬化を評価し、特に冠動脈と大動脈弁を調べて、治療方針を決めます。

  • 血清脂質検査: 総コレステロール、LDL-C、HDL-C、中性脂肪を測定します。ホモ接合体では、未治療時のLDL-Cが数百mg/dL以上と極めて高く、中性脂肪は通常ほぼ正常です。
  • 身体診察(黄色腫の評価): 指間部、肘、膝、臀部の皮膚黄色腫、腱黄色腫、角膜輪を確認します。小児期から皮膚黄色腫があれば、ホモ接合体を強く疑います。
  • アキレス腱X線撮影・超音波検査: アキレス腱の厚さを測ります。基準値を超える肥厚はFHの診断を支持します。治療効果の目安として繰り返し測ることもあります。
  • 家族歴の聴取と両親・血縁者の脂質検査: 両親がともにFHヘテロ接合体であることや、早発性冠動脈疾患の家族歴を確認します。遺伝形式の判断と、家族の早期発見に役立ちます。
  • 遺伝学的検査: LDLR、APOB、PCSK9、LDLRAP1などの変異を調べ、ホモ接合体・複合ヘテロ接合体などを確定します。変異の種類(null型か欠陥型か)は治療反応性の予測にも役立ち、条件を満たせば保険診療で実施できる場合があります。
  • LDL受容体活性測定: 皮膚線維芽細胞やリンパ球を使ってLDL受容体の機能を評価します。現在は主に研究施設などで行われ、遺伝子検査を補います。
  • 心エコー検査: 大動脈弁・弁上部の狭窄の有無と程度、心機能を評価します。定期的に繰り返して経過をみることが重要です。
  • 冠動脈評価(冠動脈CT・負荷検査・冠動脈造影): 無症状でも冠動脈狭窄、特に入口部狭窄がないかを評価します。年齢や放射線被ばく、造影剤による負担を考慮して検査方法を選びます。
  • 頸動脈超音波・足関節上腕血圧比(ABI): 頸動脈の内膜中膜複合体の厚さやプラーク、下肢の動脈病変を評価し、全身の動脈硬化の程度を把握します。

家族性高コレステロール血症(ホモ接合体)と鑑別すべき疾患

  • 重症のFHヘテロ接合体: LDL-Cの値や黄色腫の程度が重なることがあり、遺伝子検査と両親の脂質値で区別します。
  • シトステロール血症: 小児期から黄色腫と高コレステロール血症を示しますが、血中の植物ステロール(シトステロール)が高値になる点と、食事療法やエゼチミブがよく効く点で区別します。
  • 脳腱黄色腫症: 腱黄色腫がみられますが、血清コレステロールは正常に近く、血中コレスタノールの高値、白内障、慢性下痢、神経症状を伴う点が異なります。
  • 常染色体劣性高コレステロール血症(LDLRAP1異常): 臨床像はホモ接合体FHに似ますが、両親のLDL-Cがほぼ正常であることが多く、遺伝子検査で区別します。
  • 続発性高コレステロール血症(甲状腺機能低下症、ネフローゼ症候群、閉塞性肝疾患など): 原因となる病気の検査所見があり、その治療でLDL-Cが改善する点で区別します。小児期からの黄色腫はまれです。

家族性高コレステロール血症(ホモ接合体)の治療

治療の基本は、できるだけ早く、できるだけ強力にLDL-Cを下げ続けることです。ホモ接合体では、内服薬だけで目標値に達することは多くありません。そのため、薬物療法とLDLアフェレシスを組み合わせる多面的な治療が一般的です。目標値は、日本動脈硬化学会のガイドラインでは一次予防・二次予防の別などで設定されています。ただし、ホモ接合体では理想的な目標に届かないことも多く、少しでも低い値を長く保つことが重視されます。治療の効果は、残っているLDL受容体の機能によって大きく変わります。そのため、遺伝子型も踏まえ、小児期から専門施設(脂質専門医、小児科、循環器内科、アフェレシス担当部門)と連携して計画を立てます。以下は一般的な選択肢の説明です。実際の治療内容や適応、使える年齢は、主治医・専門医と十分に相談して決めてください。

  • 生活習慣の管理(食事・禁煙・運動): 飽和脂肪酸やコレステロールの摂取を控えた食事、禁煙(受動喫煙を避けることを含む)、適正体重の維持を行います。これらは全ての治療の土台ですが、ホモ接合体ではこれだけでLDL-Cを十分に下げることはできません。
  • スタチン(HMG-CoA還元酵素阻害薬): 可能な範囲で強力なスタチンを使います。LDL受容体を増やして効く薬のため、受容体活性がほとんどないnull型では効果が限られますが、多くの例で治療の基本となります。
  • エゼチミブ: 小腸からのコレステロール吸収を抑える薬で、スタチンと併用して追加のLDL-C低下を図ります。
  • PCSK9阻害薬(抗PCSK9抗体): 皮下注射でLDL受容体の分解を抑えます。受容体の残存機能がある例では効果が期待できますが、null型では効果が乏しいことがあります。
  • MTP阻害薬(ロミタピド): LDL受容体を介さずに、肝臓でのリポタンパク産生そのものを抑える内服薬で、成人のホモ接合体FHが対象とされています。下痢などの消化器症状や脂肪肝、肝機能障害が起こりうるため、脂肪を控えた食事と定期的な肝機能のチェックが必要です。
  • その他の薬剤(プロブコール、陰イオン交換樹脂、ANGPTL3阻害薬など): プロブコールは国内で黄色腫の縮小を目的に使われてきた経緯があります。LDL受容体を介さない新しい作用の薬(抗ANGPTL3抗体など)も開発されています。国内で使えるかどうかや適応は変わることがあるため、主治医に確認が必要です。
  • LDLアフェレシス: 体外循環により、血液からLDLを選択的に取り除く治療で、通常は1〜2週間ごとに行います。ホモ接合体では治療の柱とされ、小児期から導入されることが多く、黄色腫の縮小や心血管イベントの抑制に役立つと報告されています。
  • 心血管合併症への治療: 冠動脈狭窄にはカテーテル治療や冠動脈バイパス術、大動脈弁狭窄・弁上狭窄には弁置換術や大動脈基部の手術を、病変に応じて検討します。
  • 肝移植: LDL受容体を持つ正常な肝臓に置き換えることでLDL-Cを大きく下げられますが、手術のリスクや生涯にわたる免疫抑制が必要です。そのため、ほかの治療で管理が難しい例に限って慎重に検討されます。

家族性高コレステロール血症(ホモ接合体)の予後・長期フォロー

予後は、治療を始めた年齢と、長期にわたるLDL-Cの管理状況に強く左右されます。かつての未治療例では、若年での心筋梗塞や突然死が多くみられました。現在は、LDLアフェレシスや複数の薬剤の併用により、成人期以降まで生きられる患者が増えています。新しい薬剤によって、さらに改善することが期待されています。それでも一般の人と比べると心血管イベントの危険は高く、特に大動脈弁病変は治療を続けていても進むことがあります。QOL(生活の質)の面では、頻回のアフェレシスによる通院や時間的な拘束、穿刺の痛み、学業・就労との両立が課題となります。周囲の理解と生活上の工夫が欠かせません。

生涯にわたる定期的なフォローアップが必要です。通常は、脂質値と肝機能・CKなどの安全性の指標を確認しながら、薬の量やアフェレシスの間隔を調整します。心エコーは大動脈弁と弁上部、心機能をみるために定期的に行います。冠動脈評価、頸動脈エコー、ABIも、年齢や症状に応じて計画的に繰り返します。黄色腫やアキレス腱の厚さは、治療効果の目安になります。小児では成長・発達や、学校生活での配慮を考える必要があります。小児科から成人診療科へ移る時期(移行期医療)に通院が途切れないよう、早めに準備することが大切です。女性では、妊娠を希望する時点での薬の調整や、妊娠中の管理について事前に専門医と相談する必要があります。

家族性高コレステロール血症(ホモ接合体)の日常生活の注意点と公的支援(医療費助成)

食事は、脂身の多い肉、加工肉、バターやラードなど飽和脂肪酸の多い食品を控えます。魚、大豆製品、野菜、海藻、きのこ、未精製の穀物など、食物繊維の多い食品を中心にしましょう。成長期の子どもでは、極端な制限によって栄養不足にならないよう、管理栄養士の指導を受けることが勧められます。喫煙は動脈硬化を大きく進めるため、本人の禁煙だけでなく、家族の禁煙と受動喫煙の回避も重要です。運動は一般に勧められますが、冠動脈病変や大動脈弁狭窄がある場合は、激しい運動や競技スポーツで突然死の危険があります。運動の強さは必ず主治医の評価に基づいて決めてください。学校生活では、体育の参加範囲やアフェレシスによる欠席への配慮について、学校生活管理指導表などを使って学校と共有します。この病気は遺伝性であり、両親は通常ヘテロ接合体です。そのため、兄弟姉妹や親族の検査(カスケードスクリーニング)が勧められます。両親自身も治療が必要なことが多い点に注意してください。本人が将来子どもを持つ場合、子どもは少なくともヘテロ接合体となります。結婚、妊娠、出産、子どもの検査については、遺伝カウンセリングで正確な情報を得てから考えることができます。

利用できる制度・相談窓口

家族性高コレステロール血症(ホモ接合体)は指定難病です。診断基準と重症度基準などを満たすと、難病指定医の診断書をもとに都道府県等に申請し、医療費助成(特定医療費)を受けられます。自己負担の上限額は所得に応じて決まり、LDLアフェレシスや高額な薬剤による経済的負担の軽減につながります。18歳未満(継続の場合は20歳未満まで)の子どもは、小児慢性特定疾病医療費助成制度の対象となる場合があります。どちらの制度を使うかは、年齢や状況に応じて相談してください。医療費が高額になった月には高額療養費制度も利用できます。心臓の合併症で日常生活に制限が出た場合は、身体障害者手帳(心臓機能障害)や障害年金の対象となることがあります。相談窓口には、各都道府県の難病相談支援センター、保健所、医療機関の医療ソーシャルワーカー、遺伝カウンセリング外来、患者会などがあります。制度の詳細や最新の要件は、自治体や主治医に確認してください。

家族性高コレステロール血症(ホモ接合体)に伴う心のケア・心理社会的支援

生まれた時から続く病気で、生涯治療が必要なこと、若くして心臓病を起こす危険があることは、本人と家族に大きな心理的負担となります。子どもの頃から頻回にアフェレシスに通うことは、学業、友人関係、部活動、進学・就職などに影響します。周囲と違う生活を送る疎外感や、治療疲れを感じることも少なくありません。思春期には、通院や服薬を負担に感じて治療から離れてしまう危険が高まります。遺伝性疾患であることから、親が「自分のせいで」という罪悪感を抱いたり、結婚や出産、家族への告知に悩んだりすることもあります。不安や抑うつ、適応障害は珍しいことではなく、誰にでも起こりうる反応です。眠れない、意欲がわかない、通院がつらいといった状態が続く場合は、ためらわずに主治医、看護師、心理職、医療ソーシャルワーカー、遺伝カウンセラーに相談してください。同じ病気の患者や家族とのつながり(患者会など)も、孤立を防ぐ助けになります。

Medi Faceでは、慢性疾患に伴うこころの不調についてのオンライン相談も行っています。お問い合わせはこちら。

家族性高コレステロール血症(ホモ接合体)の受診の目安

  • 胸の痛みや圧迫感、締めつけ感が数分以上続く、または冷や汗や吐き気を伴う場合は、すぐに救急車を呼んでください。
  • 失神(気を失う)、急な強い息切れ、動悸を伴うふらつきがあった場合は、速やかに救急受診してください。
  • 顔や手足の片側のしびれや麻痺、ろれつが回らない、視野が欠けるといった症状が出た場合は、脳卒中の可能性があるため直ちに救急受診してください。
  • 運動時の息切れや胸の不快感が以前より出やすくなった場合は、早めに主治医を受診してください。
  • 子どもの手指の間、肘、膝、臀部などに黄色いできものを見つけた場合や、家族に若くして心筋梗塞を起こした人がいる場合は、小児科や脂質専門医に相談してください。
  • 薬の服用中に強い筋肉痛、褐色の尿、皮膚や白目の黄染、続く強い下痢が現れた場合は、主治医に連絡してください。

家族性高コレステロール血症(ホモ接合体)についてのよくある質問

Q. ホモ接合体とヘテロ接合体は何が違うのですか?

A. ヘテロ接合体は原因となる遺伝子変異を片方の親からだけ受け継いだ状態で、数百人に1人と比較的よくみられます。ホモ接合体は両親の双方から受け継いだ状態で、LDLの処理能力が大きく失われるため、LDL-Cが極めて高くなり、小児期から動脈硬化が進みます。治療の強さや必要な専門性も大きく異なります。

Q. 食事を工夫すれば薬やアフェレシスは不要になりますか?

A. ホモ接合体の高コレステロールは主に遺伝的な除去障害によるもので、食事療法だけで十分に下げることはできません。食事や禁煙は大切な土台ですが、薬物療法やLDLアフェレシスとの併用が必要になるのが一般的です。治療内容は主治医と相談して決めてください。

Q. LDLアフェレシスはいつまで続ける必要がありますか?

A. 多くの場合、長期にわたって継続が必要です。ただし、新しい薬剤の導入によってLDL-Cが十分に下がれば、間隔の延長などを検討できる場合もあります。治療効果や合併症の状況をみながら、専門医と定期的に見直すことが大切です。

Q. 兄弟姉妹や自分の子どもも検査を受けるべきですか?

A. 両親は通常ヘテロ接合体であり、兄弟姉妹はホモ接合体・ヘテロ接合体・非保因者のいずれの可能性もあるため、血液検査が勧められます。本人の子どもは少なくともヘテロ接合体となるため、適切な時期に検査を受けることが早期治療につながります。遺伝カウンセリングを利用すると、検査の意味や時期について相談できます。

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最終更新: 2026-10-18。発行: 株式会社Medi Face。本ページは、MSDマニュアル プロフェッショナル版、難病情報センター、各学会の診断基準・診療ガイドラインなどの公的・専門的情報を参照して作成した一般的な医学情報であり、診断・治療の代替ではありません。個別の診療は主治医・専門医にご相談ください。参考: MSDマニュアル プロフェッショナル版、難病情報センター。記載内容に誤りや古い情報を見つけた場合はお問い合わせからお知らせください。