アジソン病

Addison's Disease

アジソン病(Addison's Disease)|アジソン病は、副腎皮質そのものが壊れることで、生命維持に欠かせないホルモン(コルチゾールとアルドステロン)が慢性的に不足する病気です(慢性原発性副腎皮質機能低下症)。主に成人に発症し、強い倦怠感、体重減少、皮膚の黒ずみ、低血圧などが徐々に現れます。感染症や手術などをきっかけに副腎クリーゼという命に関わる急性増悪を起こすことがあります。一方で、適切なホルモン補充と緊急時の対処法を身につければ、ほぼ通常どおりの生活を送ることができます。

アジソン病の要点

アジソン病は、両側の副腎皮質が自己免疫や感染症などで壊れ、コルチゾールとアルドステロンが慢性的に不足する原発性副腎皮質機能低下症です。強い倦怠感、体重減少、皮膚の黒ずみ、低血圧などが徐々に現れ、副腎クリーゼに注意が必要で、ホルモン補充が治療の基本となる指定難病(告示番号83)です。

別名・略称原発性副腎皮質機能低下症、慢性原発性副腎皮質機能低下症、原発性副腎不全、慢性副腎不全、Addison disease
分野内分泌疾患
好発年齢主に成人
主な症状倦怠感、体重減少、皮膚の色素沈着、低血圧
主な検査血中コルチゾール・ACTH測定、迅速ACTH負荷試験
主な治療ヒドロコルチゾンなどの副腎皮質ホルモン補充(必要に応じ鉱質コルチコイドも補充)
急性増悪感染症や手術などを契機に副腎クリーゼを起こすことがある
受診する主な診療科内分泌内科

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アジソン病とは

アジソン病は、両側の副腎皮質が自己免疫・感染症・腫瘍転移などで広く破壊されて起こる、慢性の原発性副腎皮質機能低下症です。副腎皮質は3層からなり、外側の球状層は鉱質コルチコイド(アルドステロン)、中間の束状層は糖質コルチコイド(コルチゾール)、内側の網状層は副腎アンドロゲン(DHEA、DHEA-S)を分泌します。アジソン病ではこれらが一般にすべて低下します。一般に皮質の90%前後が失われると症状が明らかになるとされます。コルチゾールが減ると、視床下部・下垂体に対するコルチゾールの負のフィードバックが弱まり、下垂体から副腎皮質刺激ホルモン(ACTH)が過剰に分泌されます。これが特徴的な色素沈着の原因です。なお、血小板減少・紫斑・脾臓摘出といった内容は、特発性血小板減少性紫斑病などの血液疾患に関するものです。アジソン病の症状や治療ではありません。

1855年に英国の医師Thomas Addisonが、副腎病変と貧血様の衰弱、皮膚の色素沈着を伴う症例を報告したことが病名の由来です。当時の主な原因は副腎結核でした。現在の先進国では、自己免疫性副腎炎が最多の原因となっています。病型は原因によって分けられます。主なものは、①自己免疫性(単独型、または他の自己免疫性内分泌疾患を伴う自己免疫性多内分泌腺症候群:APS-1型・2型)、②感染性(結核、真菌、HIV関連の日和見感染など)、③その他(がんの両側副腎転移、悪性リンパ腫、両側副腎出血・梗塞、アミロイドーシス、薬剤性など)です。下垂体や視床下部の障害でACTHが不足して起こる続発性副腎皮質機能低下症とは病態が異なり、区別されます。日本の指定難病(告示番号83)では、先天性副腎皮質酵素欠損症、先天性副腎低形成症、ACTH不応症、副腎白質ジストロフィーなどは別の指定難病として扱われています。

アジソン病の疫学・患者数

欧米の報告では、有病率は人口100万人あたり100〜140人程度とされ、近年はやや増加傾向とする報告もあります。日本の全国疫学調査では患者数は1,000人前後と推定されており、欧米より少ない稀な疾患です。発症は成人期、特に30〜50歳代に多いとされますが、小児から高齢者まで起こり得ます。原因別にみると、日本でも以前は結核性が多くを占めていました。近年は自己免疫性が最も多く、結核性がこれに次ぎます。自己免疫性はやや女性に多く、結核性は男性に多い傾向が報告されています。高齢者や担がん患者では、がんの副腎転移や抗凝固療法中の副腎出血も考慮が必要です。

アジソン病の原因・病態生理

自己免疫性副腎炎では、副腎皮質のステロイド合成酵素である21-水酸化酵素(CYP21A2)に対する自己抗体(抗21-水酸化酵素抗体)が高頻度に検出されます。病変の本態は、T細胞を中心とする細胞性免疫による皮質細胞の破壊と考えられています。HLA-DR3/DR4などの疾患感受性遺伝子との関連が知られています。主に次の2つの病型に分けられます。<br>・APS-1型:AIRE遺伝子の異常による常染色体劣性遺伝の疾患です。小児期から慢性皮膚粘膜カンジダ症、副甲状腺機能低下症、アジソン病が順に出現することが多いとされます。<br>・APS-2型(シュミット症候群を含む):成人に多い型です。アジソン病に自己免疫性甲状腺疾患(橋本病・バセドウ病)や1型糖尿病を合併します。多遺伝子性の素因が関与するとされます。<br>感染性では、結核菌が血行性に両側副腎へ広がって乾酪壊死を起こし、のちに石灰化を残します。ほかに、ヒストプラズマ症などの深在性真菌症や、免疫不全に伴うサイトメガロウイルス感染も原因になり得ます。

その他の発症機序もあります。肺がん・乳がんなどの両側副腎転移や悪性リンパ腫による置換は、画像で副腎腫大として捉えられます。抗凝固療法中、重症敗血症(髄膜炎菌感染によるウォーターハウス・フリーデリクセン症候群など)、抗リン脂質抗体症候群では、両側副腎出血・梗塞により急速に発症することがあります。薬剤では、ステロイド合成を阻害する薬(ミトタン、一部のアゾール系抗真菌薬など)の関与が知られています。近年は免疫チェックポイント阻害薬による副腎炎の報告もあります。男性の副腎不全では、遺伝性の副腎白質ジストロフィーも鑑別上重要です。<br>ホルモン不足の結果、次のような変化が起こります。<br>・コルチゾール欠乏:糖新生の低下(低血糖)、血管のカテコラミン反応性の低下(低血圧)、ストレス時の循環・代謝の破綻、自由水排泄障害による低ナトリウム血症。<br>・アルドステロン欠乏:腎でのナトリウム喪失と循環血漿量の減少、カリウム・水素イオンの排泄障害(高カリウム血症、代謝性アシドーシス)。<br>・ACTH前駆体(POMC)の増加:POMCからはα-MSHなども切り出されるため、ACTHとともにメラノサイトを刺激し、皮膚・粘膜の色素沈着が生じます。

アジソン病の症状

  • 全身倦怠感・易疲労感: 最も頻度の高い症状で、数か月〜数年かけて徐々に強まります。「疲れ」「気力低下」と受け取られ、診断が遅れる原因になります。
  • 食欲不振・体重減少: ほぼ全例でみられ、数kg〜十数kgの体重減少を伴うことがあります。悪性腫瘍や摂食障害と誤認されることもあります。
  • 悪心・嘔吐・腹痛: 消化器症状が目立つ例も多くあります。急性腹症と紛らわしい強い腹痛は、副腎クリーゼの前兆であることがあります。
  • 皮膚・粘膜の色素沈着: 原発性に特徴的な所見です。手のしわ、肘・膝、爪床、乳輪、手術痕、歯肉・口腔粘膜などが黒褐色になります。日焼けが引かない、と気づかれることもあります。
  • 低血圧・起立性めまい: 循環血漿量の減少と血管反応性の低下により、立ちくらみや失神をきたします。降圧薬を飲んでいないのに血圧が低い場合は注意が必要です。
  • 塩分渇望: アルドステロン欠乏による塩分喪失を反映し、塩辛いものを無性に欲するようになります。原発性に比較的特異的とされます。
  • 低血糖症状: 空腹時や運動後に冷汗、ふるえ、集中力低下が出ることがあります。小児ではけいれんや意識障害で発見されることもあります。
  • 筋肉痛・関節痛・脱力: 筋痛、関節痛、筋力低下がみられます。高カリウム血症が重い場合は筋力低下や不整脈の原因になります。
  • 抑うつ・無気力・集中力低下: 気分の落ち込み、意欲の低下、思考力低下などの精神症状を伴うことがあります。うつ病と診断されて経過していた例も報告されています。
  • 腋毛・恥毛の減少、性欲低下(女性): 副腎アンドロゲンが減るため、主に女性で体毛の減少や性欲低下がみられます。月経不順を伴うこともあります。
  • 副腎クリーゼ(急性副腎不全): ショック、意識障害、高熱、激しい腹痛・嘔吐、高度の電解質異常を呈する緊急事態です。治療しなければ致死的になり得ます。

アジソン病の経過と合併症

自己免疫性では、病変はゆっくり進むとされます。まず球状層の障害を反映してレニン活性が上昇し、次いでストレス時のコルチゾール反応が低下し、最終的に基礎分泌も低下するという段階的な経過をたどることが多いとされます。この間、症状は非特異的で波があります。そのため、感染症・手術・外傷・妊娠出産などの身体的ストレスを契機に、副腎クリーゼで初めて診断されることも少なくありません。結核性はやや緩徐に進行します。一方、両側副腎出血では数時間〜数日で急性副腎不全に陥ります。治療を受けない場合の自然歴は不良です。慢性的な衰弱が続くか、クリーゼで死亡に至り得ます。ホルモン補充療法が確立した現在では、長期の生存が期待できます。

最も重要な合併症は副腎クリーゼです。誘因は、胃腸炎による嘔吐・下痢(内服薬が吸収されない)、発熱を伴う感染症、手術、服薬の自己中断などです。補充療法中の患者でも年に数%程度の頻度で生じるとの報告があります。自己免疫性では、自己免疫性甲状腺疾患、1型糖尿病、悪性貧血、白斑、早発卵巣不全、セリアック病などの合併に注意が必要です。APS-1型では副甲状腺機能低下症や慢性カンジダ症も合併します。甲状腺機能低下症を合併している場合に、副腎不全を見逃したまま甲状腺ホルモンだけを先に補充すると、コルチゾールの代謝が亢進して副腎クリーゼを誘発し得ます。治療面では、糖質コルチコイドの過剰補充により、骨粗鬆症、耐糖能異常、体重増加、心血管リスク上昇が懸念されます。結核性では、活動性結核の再燃や他臓器結核にも注意が必要です。

アジソン病の診断・診断基準

診断は、①副腎不全を疑う、②コルチゾール分泌の低下を確認する、③原発性(副腎性)か続発性(下垂体・視床下部性)かを区別する、④原因を特定する、という順に進めます。倦怠感・体重減少・色素沈着・低血圧などの臨床像に、低ナトリウム血症や高カリウム血症、好酸球増多、低血糖が組み合わさると、診断の手がかりになります。早朝の血中コルチゾールが低く、血漿ACTHが高ければ原発性副腎不全が強く疑われます。迅速ACTH負荷試験で反応が乏しいことを確認して確定します。日本では厚生労働省研究班の診断基準(主症状・検査所見・除外診断の組み合わせ)に沿って判定します。指定難病の申請には、難病指定医による診断と臨床調査個人票の作成が必要です。評価は内分泌専門医が行うことが望まれます。副腎クリーゼが疑われる場面では、検査結果を待たずに採血(コルチゾール・ACTH)だけ行い、直ちに治療を開始することが原則です。

  • 一般血液・生化学検査: 低ナトリウム血症、高カリウム血症、低血糖、軽度の代謝性アシドーシス、腎前性の尿素窒素上昇、好酸球・リンパ球の増多、正球性貧血などがみられます。軽度の高カルシウム血症を伴うこともあります。ただし初期には電解質が正常なことも少なくありません。
  • 早朝血中コルチゾール・血漿ACTH同時測定: コルチゾールが著しく低く、ACTHが基準値を大きく上回れば原発性副腎不全を強く示唆します。コルチゾールが十分に高ければ否定的です。判定値は測定法によって異なり、ストレス下や重症疾患の際は解釈に注意が必要です。
  • 迅速ACTH負荷試験: 合成ACTH(テトラコサクチド)を静注し、30・60分後のコルチゾール頂値を評価します。頂値が判定基準(測定法依存)に達しなければ副腎皮質の予備能低下と判断します。確定診断の中心となる検査です。
  • 血漿レニン活性・アルドステロン: レニン高値とアルドステロン低値は鉱質コルチコイド欠乏を示し、原発性に特徴的です。レニンは鉱質コルチコイド補充量の目安にも使われます。
  • DHEA-S・尿中遊離コルチゾール: DHEA-Sの低値は副腎アンドロゲン欠乏を反映します。24時間尿中遊離コルチゾールの低値は補助的な所見になります。
  • 抗21-水酸化酵素抗体: 陽性であれば自己免疫性副腎炎を支持します。測定できる施設は限られます。陰性の場合は感染・腫瘍などの他の原因検索を強化します。
  • 副腎CT(必要に応じてMRI): 自己免疫性では副腎は萎縮していることが多いです。結核の活動期や転移・リンパ腫・出血では腫大、陳旧性結核では石灰化がみられます。画像所見は原因の推定に役立ちます。
  • 原因検索のための追加検査: 胸部画像、インターフェロンγ遊離試験などで結核を評価します。甲状腺機能・抗体、血糖・HbA1c、カルシウムなどで併存する自己免疫疾患を確認します。男性では副腎白質ジストロフィーを除外するため極長鎖脂肪酸の測定を検討します。

アジソン病と鑑別すべき疾患

  • 続発性副腎皮質機能低下症(下垂体前葉機能低下症・ACTH単独欠損症など): ACTHは低値〜正常で、色素沈着がなく、アルドステロン系は保たれるため高カリウム血症を通常きたしません。
  • ステロイド薬中止後の副腎不全(医原性): 長期のステロイド投与歴があり、視床下部-下垂体-副腎系が抑制されて生じるもので、ACTHは高値になりません。
  • ACTH不応症・先天性副腎低形成症・先天性副腎皮質酵素欠損症: 多くは新生児〜小児期に発症し、遺伝学的背景や性分化異常、ステロイド中間代謝物の蓄積などで区別されます。
  • 副腎白質ジストロフィー: 男性で原因不明の原発性副腎不全をみた場合に鑑別が必要で、極長鎖脂肪酸の上昇や神経症状の有無で区別します。
  • 悪性腫瘍・神経性やせ症・うつ病: 体重減少や倦怠感は共通しますが、色素沈着、高カリウム血症、ACTH高値を伴うコルチゾール低値はアジソン病を示唆します。
  • 他の色素沈着や低ナトリウム血症をきたす疾患(ヘモクロマトーシス、薬剤性色素沈着、SIADHなど): 内分泌検査でACTH高値とコルチゾール低値がそろわない点で鑑別されます。

アジソン病の治療

治療の柱は、欠乏した副腎皮質ホルモンを生涯にわたって補うホルモン補充療法です。具体的には、糖質コルチコイド(主にヒドロコルチゾン)と鉱質コルチコイド(フルドロコルチゾン)を内服します。目標は、生理的な分泌パターンに近い量を補い、不足(倦怠感・低血圧)も過剰(体重増加・骨粗鬆症・耐糖能異常)も避けることです。体調を崩したときの増量方法(シックデイ・ルール)と副腎クリーゼへの備えは、患者・家族への教育として治療と同じくらい重要です。結核や腫瘍などの原因疾患がある場合は、その治療も並行して行います。用量の調整は個々の状態により異なるため、自己判断で変更せず、内分泌専門医を含む主治医と相談しながら進めます。

  • 糖質コルチコイド補充(ヒドロコルチゾン): 成人では1日15〜25mg程度を2〜3回に分け、起床時に最も多く服用する方法が一般的です。用量は症状、体重、血圧、生活リズムなどを総合して調整します。血中ACTHを正常化させることは用量調整の目標にしません。
  • 鉱質コルチコイド補充(フルドロコルチゾン): 原発性では多くの場合に必要で、1日0.05〜0.2mg程度を目安に、血圧、立ちくらみ、血清カリウム、レニン活性をみて調整します。浮腫や高血圧が出た場合は減量を検討します。
  • シックデイ・ルール(ストレス時の増量): 38℃以上の発熱や体調不良のときは、ヒドロコルチゾンを一時的に通常の2〜3倍に増やすことが一般に勧められます。具体的な基準と量は、あらかじめ主治医と取り決めておきます。嘔吐で内服できない場合は、速やかに医療機関で注射による補充を受けます。
  • 副腎クリーゼの救急治療: ヒドロコルチゾン100mgを静注し、その後は持続静注または分割投与(1日200mg程度)を行います。あわせて生理食塩水・ブドウ糖による大量補液、電解質の補正、誘因(感染など)の治療を行います。疑われた時点で検査結果を待たずに開始します。
  • 手術・処置・出産時のステロイドカバー: 侵襲の程度に応じてヒドロコルチゾンを増量・静注します。全身麻酔の手術や分娩では、医療チームへの事前の情報共有が不可欠です。
  • 妊娠中の管理: 妊娠後期にはヒドロコルチゾンの必要量が増えることがあり、産科と内分泌科の連携のもとで用量を調整します。デキサメタゾンは胎盤で不活化されにくいため、通常は補充薬として選ばれません。
  • 薬物相互作用への配慮: リファンピシン(結核治療薬)や一部の抗てんかん薬はステロイドの代謝を速めるため、補充量の増量が必要になることがあります。新しい薬を始める際は必ず申告します。
  • 原因疾患と合併症の治療: 結核性では抗結核薬による治療を行います。合併する甲状腺機能低下症や1型糖尿病も治療しますが、副腎不全の補充を先に開始してから甲状腺ホルモンを始めるのが原則です。
  • 副腎アンドロゲン補充(DHEA): 女性の倦怠感や性欲低下に対して海外で検討されてきましたが、効果は限定的とする報告が多くあります。日本では医薬品として承認されておらず、一般的な治療ではありません。

アジソン病の予後・長期フォロー

適切なホルモン補充と患者教育が行われれば、多くの患者が就学・就労・妊娠出産を含めて通常に近い生活を送れます。一方、海外の大規模研究では、一般人口に比べて死亡率がやや高いとの報告があります。主な要因として、副腎クリーゼ、感染症、心血管疾患が挙げられています。特に診断前のクリーゼと、胃腸炎時の対応の遅れが重大なリスクです。QOLについては、補充療法中でも倦怠感や活力低下が残る例があります。1日の中でのコルチゾール濃度の変動が生理的パターンと異なることなどが一因と考えられています。

フォローアップは、一般に数か月〜1年ごとの定期受診で行います。評価する主な項目は次のとおりです。<br>・自覚症状、体重、血圧(立位を含む)<br>・血清電解質、血糖、レニン活性<br>・補充量が適切か(過剰補充の徴候:体重増加、高血圧、耐糖能悪化、骨密度低下)<br>自己免疫性では、甲状腺機能、血糖・HbA1c、ビタミンB12などを定期的に確認し、新たな自己免疫疾患の出現に備えます。必要に応じて骨密度検査も行います。結核性では結核の再燃に、悪性腫瘍に伴う例では原疾患の経過に注意します。受診のたびに、シックデイ・ルールと緊急時の対応を患者・家族と確認し直すことが大切です。

アジソン病の日常生活の注意点と公的支援(医療費助成)

ホルモン補充薬は毎日決まった時間に服用し、決して自己判断で中断しないでください。外出・旅行時は予備の薬を多めに持ち歩き、手荷物に入れておきます。病名、服用薬、緊急時の対応(ヒドロコルチゾン注射が必要であること)を記した緊急時カードや、ブレスレットなどの身につけるもの、スマートフォンの医療情報機能を活用し、意識障害時にも医療者に伝わるようにしておきましょう。発熱、下痢・嘔吐、強い疲労、抜歯・小手術、激しい運動などの際には、主治医と取り決めた方法で増量します。暑い季節や大量の発汗時には、水分と塩分を十分にとるよう心がけます。日常的な運動や仕事は原則として可能です。ただし、長時間の過度な負荷の前後では体調をよく観察してください。家族や職場、学校の関係者にも病気と緊急時の対応を共有しておくと安心です。自己免疫性で家族歴がある場合や、小児期発症でAPS-1型などの遺伝性疾患が疑われる場合には、遺伝カウンセリングを受けることも選択肢となります。

利用できる制度・相談窓口

アジソン病は指定難病(告示番号83)で、診断基準と重症度分類を満たす場合、または軽症でも医療費が一定額を超える月が続く「軽症高額該当」に当たる場合に、医療費助成を受けられます。申請は、難病指定医が作成した臨床調査個人票を添えて、都道府県・指定都市の窓口(多くは保健所)に行います。18歳未満(継続の場合は20歳未満)では、小児慢性特定疾病医療費助成の対象となり得ます。指定難病の患者は障害者総合支援法に基づく障害福祉サービスの対象にもなります。日常生活や就労に著しい制限が続く場合には、障害年金の対象となる可能性もあります。いずれも個々の状況で判断されるため、主治医、医療機関の医療ソーシャルワーカー、年金事務所などに相談してください。療養生活や就労の悩みについては、各都道府県の難病相談支援センターや保健所の保健師、ハローワークの難病患者就職サポーターも相談窓口として利用できます。

アジソン病に伴う心のケア・心理社会的支援

アジソン病では、診断までに長い期間「気のせい」「疲れ」「うつ」と言われてきた経験が、医療への不信や心の傷として残ることがあります。診断後も、生涯の服薬、いつ起こるかわからない副腎クリーゼへの不安、外見上は元気に見えるため周囲に理解されにくい倦怠感など、特有の負担を抱えがちです。コルチゾールの不足や過剰そのものが、気分の落ち込み、不眠、イライラ、集中力低下を引き起こすこともあります。そのため、心の不調を感じたら、ホルモン補充量の見直しも含めて主治医に伝えることが大切です。抑うつ、不安、適応障害が続く場合には、心療内科・精神科の受診、カウンセリング、患者会や難病相談支援センターでのピアサポートが助けになります。家族も、緊急時対応の役割を担うことによる緊張を抱えやすいため、家族自身も相談先を持つことが勧められます。

Medi Faceでは、慢性疾患に伴うこころの不調についてのオンライン相談も行っています。お問い合わせはこちら。

アジソン病の受診の目安

  • 発熱、嘔吐、下痢があって薬を飲めない、または飲んでも吐いてしまうときは、すぐに医療機関を受診してください。
  • 強い腹痛、ぐったりして動けない、意識がもうろうとする、血圧が極端に低い・失神したといった場合は、副腎クリーゼの可能性があるため救急要請を含めて直ちに受診してください。
  • シックデイ・ルールで増量しても1〜2日で改善しない体調不良が続くときは、早めに主治医に連絡してください。
  • 原因のはっきりしない倦怠感や体重減少に、皮膚・歯ぐきの黒ずみや立ちくらみ、塩辛いもの好きが加わった場合は、内科(内分泌内科)を受診してください。
  • 手術、抜歯、出産、新しい薬の開始を予定しているときは、事前に主治医へ相談してください。
  • 治療中にむくみ、血圧上昇、急な体重増加、または倦怠感の再燃がみられた場合は、補充量の調整が必要なことがあるため受診してください。

アジソン病についてのよくある質問

Q. 薬は一生飲み続ける必要がありますか?

A. 多くの場合、副腎皮質の機能は回復しないため、生涯にわたるホルモン補充が必要です。補充しているのは本来体内で作られるべきホルモンで、適量であれば高用量ステロイド治療のような副作用は起こりにくいとされます。自己判断での中断は副腎クリーゼにつながるため避けてください。

Q. 皮膚の黒ずみは治りますか?

A. 補充療法でACTHの過剰分泌が落ち着くと、色素沈着は数か月から年単位で徐々に薄くなることが多いです。ただし、口腔粘膜や手術痕などでは一部が残ることもあります。

Q. 妊娠・出産はできますか?

A. 適切な補充療法のもとで妊娠・出産している方は多くいます。妊娠中は必要量が変わることがあり、分娩時にはステロイドの増量が必要です。妊娠を希望する段階から主治医・産科医と相談しておくと安心です。

Q. 子どもに遺伝しますか?

A. 成人発症の自己免疫性アジソン病は、体質的なかかりやすさが関与するものの、単純な遺伝病ではありません。ただし家族に甲状腺疾患や1型糖尿病がやや多い傾向があります。小児期発症のAPS-1型や副腎白質ジストロフィーなど遺伝性の病型もあるため、心配な場合は遺伝カウンセリングをご利用ください。

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最終更新: 2026-10-18。発行: 株式会社Medi Face。本ページは、MSDマニュアル プロフェッショナル版、難病情報センター、各学会の診断基準・診療ガイドラインなどの公的・専門的情報を参照して作成した一般的な医学情報であり、診断・治療の代替ではありません。個別の診療は主治医・専門医にご相談ください。参考: MSDマニュアル プロフェッショナル版、難病情報センター。記載内容に誤りや古い情報を見つけた場合はお問い合わせからお知らせください。